2019年05月26日

竹村健一: 文明時代と文明後時代ーテレビ人間がかえたもの,1984年,

竹村健一: 文明時代と文明後時代ーテレビ人間がかえたもの
神の摂理ーテレビ人間
1984年
現在社会を解体方向に進ませる最大の原動力は新しい文明後時代の申し子ーテレビ人間である。
彼らは本質的に解体性向を内蔵した人間だと私は考える。
これが神の摂理というものであろう。
人類史上第二の大転換期である文明の後の時代の始まりには,ちゃんとそれに適した人間が生まれつつあるのである。
文字と活字で育った旧時代人間には,解体の方向が本質になる事はありえない。
活字媒体には本質的に「集中化,画一化」の性質があるからである。
彼らはオルテガの言う「貴族」であって,パスカルの言う「考える葦」であった。
「メディアはメッセージである」と喝破して,マーシャル・マクルーハンはメディアが人間を大きく変えることを我々に教えた。
そのメディアの中でも彼は特に
文字,活字,テレビ
をチャンピオンとする電気メディア,この3つを人類の最も大きく変えたものとして文明史を3つに分けた。
つまり15世紀中期,グーテンベルクが活字を始めするまでを文明史の第1期,
20世紀電気メディアの発明までを第2期,
現代を第3期
としたのである。
私は文字と活字を同じ方向の性質を持つものと考えるので,文字の発明以来テレビの登場までをひとまとめにする。
この分類はケネス・ボールディングの分け方,すなわち
文明前時代(文字のない時代),
文明時代(文字活字の時代),
文明後時代(ラジオテレビが主流の時代)
とも一致するのである。
そして文明後時代を背負うメディアは電気メディアであって,この電気メディアで育った人間はぴったり解体時代の性質を含んでいると考えるのである。
文明時代は,人間が「生産者」になったためにまず神から離れて,さらに人間からも離れた方向であった。
文明後時代は,その間違った道を解体者になることによって元へ戻る過程である。
本質的に解体性向を持ったテレビ人間がこれからの時代に生まれ育つというのは,全く神の摂理としか言いようがない。
公害によって宇宙の創造神は人間に警告したのである。
これ以上「文明化の道」を進むな,というわけである。
活字的思考の結果,人間は機械を産んで,機械的にひとつの事しかできない奇形人間を大量に作った。
それが進歩の証であると誤解をしてきた。
この専門バカたちには,公害という打撃を与える以外には,今までやってきたことを反省させることができなかったのである。
しかしテレビ・メディアの中で育った新しい人間たちは公害という「神のムチ」を受ける前から機械的組織を嫌い,機械人間になることを拒否し始めていた。
その先鋭的な表れは「ヒッピー族」であるが,いわゆる「意識3型」の若者が,人間らしい生き方を求めて大企業組織を離れつつある。彼らには公害という神の警告は必要なかった。
人間本来の怠け心を内蔵して育ってきたからである。
怠け心を否定する人間はまだ多い。
文明人とは「人間は働くべきもの,働かざるもの食うべからず」と教え込まれてきた「人間にあらざる人間」である。
この文明人には老子のいう
「我は愚人の心なる,沌沌たり」
と言う無為の心境はなかなか理解できない。
せいぜいわかるのは「エコノミック・アニマル」と言われて「もっと休日を多くして,生産を落とせ」と同時代の人間に言われた時である。
ニクソン声明で円切り上げを迫られて,初めて働きすぎが必ずしも良くないことに気づく程度である。
この程度の覚りであっては根本的解決にはならない。
いわゆる文明国は先進国であるほど神の摂理からより離れて,よりエコノミック・バランスを壊しているのだ,という根本的理念の認識が必要なのである。
繰り返すがいわゆるテレビっ子にはこういう解説は必要ない。
体の中に
「仕事よりレジャー」,
「確一集中的な専門家よりも拡散型多様性あるジェネラリスト」
という気持ちが内蔵されて育っているからである。
豊かな社会に育ったテレビっ子たちは努力する気がない,と貧しい社会で育った大人を批判する。
向上心がなく,現在の恵まれた状況を当然だと受け入れて感謝もしない。その通りである。
しかし私はそれが社会の流れだと考えている。
大人がいかに「働かざるもの食うべからず」といっても現実に働かずに食えているのだから,その言葉が説得力を持たない。
「向上心のない人間は人間のクズだ」と大人が叫んでも,「クズ的人間」の喜びをあえて見いだすのは新しい意識3型人間なのである。
もうこれ以上人間の延長たるものはいらない,人間そのものをもっと大事にしたい,と「新人種」は言うのである。
人間らしく生きたい,もうこれ以上科学を発達させたり, SST空港を作るのに努力したくない。
西洋社会を作り上げてきたのは競争の原理であるが,これからは東洋的な調和で生きたい。
そのために進歩が止まってても結構だ。
精神や頭脳を集中して,努力していくよりも,好きなようにバラバラな生き方(分散)をしたい。
こんなふうに新人種(ライクの言葉では「意識3型人間」)は言うのである。
これは文明社会の解体である。
しかしこれが人類の種としての滅亡を未然に防ぐ生き方ではないだろうか。
私は人間の知恵を信頼している。
文明社会の人間は新しい文明後社会の生き方がわからない。
新しい時代には新しい人種の知恵に頼りたいのである。
竹村健一,解体への思想ー文明後時代への手がかり,中公文庫,1984年,

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年間、かなりの人が自殺する。外務省も例外でないようだ。佐藤氏は、周囲に五人の自殺者を知っているという。
昔、竹村健一という評論家がいた。
彼はマスコミにも出ず、本も見かけない。その竹村健一が、佐藤氏に身の引き方を伝授したという。
その結果、佐藤氏はテレビには出ないのをモットーにしているようだ。
佐藤優x片山杜秀著,平成史
1 外務省の役人も普通以下の人間がいる?
外務省に入ってから隣の課の人が首をつった。その一年上の人間も飛び降り自殺した。練炭自殺した人間もいる。
外務省には、陰険な官僚が多い。パワハラ上司の集まり。
「君はどうして仕事ができないの?能力ができないからできないの? やる気がないからできないの? その両方なの?」
とひたすら問い詰める局長がいるという。その部下が東大出の官僚だが、精神を病んで、地下のボイラー室で首をつった。昔は
自殺の大蔵、
汚職の通産、
不倫の外務
と言われたが、ある時期から外務省が三冠王になった。
佐藤氏が勤務していた国際情報局と同じ五階に待命中の大使の部屋があった。五階トイレにあった手拭き用たタオルに、自分のウンコをなすりつける大使がいた。この大使は自分の人事に不満があったという。この現象は平成になってから出てきたようだ。
2 有名人のうまい身の引き方とは?
竹村健一は3つ教えてくれたという。
「一つは、テレビとの付き合い方。
評論家マクルーハンは、97パーセントの情報はテレビで伝達され(今はインターネットか)、残りの3パーセントは活字で伝わると指摘。
消費されるだけだから、テレビには気をつけろと。
活字の世界で長生きしてメディアで影響力を持ちたいなら、テレビとの距離感が大事だ」と。
2つ目はコマーシャルに出帝はいけないと。
「もし、その商品に欠点が見つかったり、会社が問題を起こすと責任をとらされる」と。
3つ目は、人と会う場所。
「政治家や出版社の幹部に呼び出されてもこちらから出向くなと。
向こうからのオファーならこちらに来てもらえ。あるいは中立的な場所を指定せよ。
こちらに用がある場合は、自ら相手の指定する場所へ行く。
何より教えられたのは身の引き方。
彼は、最初、テレビから消えた。
次に、ラジオを辞めた。
最後に活字の世界から引退した。その過程で、自身が持っていた数十の会社を畳んだ。消え方は恰好よかった」と。
よく考えると、20年前、よく本を書いていた人が突如、見かけなくなる人が他にもいる。外交評論家の落合も最近あまり本を見ないが。どうしているんだろう。
3 優先順位の必要性?
井上ひさしによると、
「作家になったら、常にやりたいリストを100個作っておくことと。
そして半年おきにハイクオリテイの順に並べ替えよ。そのうち1割が2割しか実現しないが」
と。これは、僕の日常生活でも応用できると思う。
目標はあくまで高くして、今の自分が本当にしたいことをリストにする。100は多いかもしれないが、それに近づけることはできる。
4 最近は右翼の特定の人へのテロがない代わりに、楽しく見える人を標的に?
「戦前なら社会に対する不満があれば、権力を持つ特定の誰かを狙った。原敬や浜口雄幸、犬養毅らがそうだった。
しかし、現在は、特定の個人に集中しない。権力のシンボルが存在しない。だから、豊かに暮らしていそうな人、楽しく生きていそうな人に憎しみが向かった。その象徴が秋葉原にトラックで突っ込んだ秋葉原無差別殺傷事件だった。
秋葉原はパリのシャンゼリゼ通りやマンチェスターのコンサート会場が狙われたテロと共通している」
と。
最近も、川崎の事件が起こったが、いつ、我々も標的にされるかわからない。
また、車をぶつけられ殺されてもおかしくない時代だ。
普段のメールやラインでもあてはまる。
PCのメールで二日返事を出さなくても問題はありません。
しかし、LINEを既読にして一日返事しなければ、恨みを買う。
殺人事件に発展する可能性が十分ある。
或る意味では、昭和の戦前時代の方が庶民にとっては住みやすかったのではないか。
5 日本人はどうして、テレビの報道を信じるのか?
「3・11の震災直後、下りの新幹線の席が取れない状況だった。しかし、メディアは報道しなかった。
大手メディアの幹部は家族を九州や沖縄に避難させていた。原発事故後の報道統制をみると、この国は非常時に翼賛体制がとれる。
メディアは繰り返し、「絆」「自己規制」「不謹慎」を言った。
みんなが逃げ出したり、見棄てたりしないように翼賛的な情報で操作した。その結果、パニックが起こらず、ソフトランディングできた。
たくさんのボランティアが被災地に入った。ボランティアは、現代における翼賛と言える。
誰も強制しないが、自発的に国に奉仕する。ボランティアの動きを見ても翼賛体制を作れる社会だとわかる」と。
思えば、3・11の時、下りの新幹線が一杯などとメディアの報道を見た事がなかった。彼らの家族を優先させて無事避難させていたとはびっくりした。テレビのいう事を日本人は100パーセント信じているのではないか。
いざと言う時の人間の姿が垣間見えて面白い。
6 小保方晴子氏の両親はあらかじめ知っていた?
小保方晴子氏の両親は危機管理能力がある。
STAP細胞発見当初、彼女はメディアにもてはやされた。しかし、両親は一度も表に出なかった。
この種の報道の場合、親が登場して、「うちの晴子は・・・・・」と自慢する。きっと、両親は知っていて出てこなかった。
「また晴子がしでかした。今回はスケールが大きいから大変だ」と。
7 コンビニと監獄は似ている?
「村田沙耶香の『コンビニ人間』を読んで想起したのが監獄だった。
導入部分で客がポケットに手を入れて小銭を出そうとする。
小銭に音を聞いて、タバコか新聞を買う客だと推測するシーンがある。
佐藤氏はここを読んで、既視感を覚えた、という。
東京拘置所で、看守が鍵束を出す音とタイミングで自分の房が開くかどうかが分かると。
あとは主人公が同棲相手に与える餌。
監獄では「配当!」という合図とともに小さい窓から食事が入れられる。
コンビニと監獄の間にアナロジーがあると。社会の監獄化を表現した小説なのか」と。
これは、日々の習慣で感じることでないだろうか。
同じ時間帯に同じ人に道端出会い、此の身振りの後に、挨拶ほをするなとか、上司がこういうと、恐らく、怒られるだろうとか予想がつくのと似ている。
8 最近の芥川賞の本は読む価値がない?
「芥川賞の変質が顕著になったのは、2003年の綿矢りさ、金原ひとみからでしょう。
その翌年から本屋大賞が設立された。
従来の文学賞に対する不満があった」と。
9 西邊邁氏の自殺は保守というより唯物論者として自殺した?
「人間は二十歳のころに本格的に触れた何かから離れられない。
思想でも音楽でも宗教でも、無意識にそこに回帰していく。西邊邁は大学時代にブント(共産主義者同盟)に加入している。彼は原点だったブントの活動家に立ち返って自殺した」と。
いろいろな説があるもである。オフェーリアの真似た自殺という説もあるが

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2018年12月22日

ヤス:米国防の実態,中イロ日の新経済圏

ヤス:米国防の実態,中イロ日の新経済圏
2018.12.01(第57回)
加速する世界の多極化、日本が中心
2018年もあっという間に過ぎ、残すところわずかとなってしまった。
今年は、トランプ旋風による保護主義が世界を席巻し、既存の世界秩序が大きく撹乱される一年となったが、
来年はさらに変化の激しい年になると思われる。
今回は、来年の激動の中心となる状況について解説したい。
重要な情報なのではないかと思う。
まず、先頃トランプ政権から発表になった国防関連の報告書について解説したい。
おそらく日本の主要メディアでは報道されないと思うので、重要な情報だ。
●トランプ政権の自由貿易否定の理由
周知のようにトランプ政権は、中国のみならず日本やEUなどの同盟国に対しても関税を大幅に引き上げ、自由貿易によるグローバリゼーションを断念する姿勢を明確にしている。
中国との間で始まった貿易戦争が、世界経済の成長を押し下げるのも時間の問題と見られている。
トランプ政権はこのような保護主義的な政策を採用する理由を、自由貿易に基づくグローバリゼーションでは、アメリカの貿易赤字が大きく不均衡な経済関係を強いられているので、国益を守るためにこれを是正する必要があるからだとしている。
保護貿易へのシフトは、あくまで「アメリカ・ファースト」の政策の一環だというわけだ。
しかし筆者は機会あるごとに、トランプ政権の真の目的は、
軍事的な覇権の再構築である
と主張してきた。アメリカの国防産業の基礎になっているのは民間の製造業だ。
グローバリゼーションの影響で製造業が空洞化してしまったため、国防産業の産業的な基盤が失われた。
そのため、アメリカの兵器システムは、急速に発展しているロシアや中国の最新鋭のシステムに追いつかれ、その結果、アメリカは軍事的に劣勢な状況に追い込まれつつある。
 このような状況を挽回するためにトランプ政権は、
1)保護貿易によって国内製造業を保護し、
2)インフラと軍事に対する政府の公共投資を活発に行い、3)海外に移転した製造業の生産拠点の国内回帰を実現する政策へと舵を切った。
このようにして国内の製造業の基盤を整備して、ロシアや中国を凌駕する強い国防産業を再建することを目標にしている。
これが、トランプ政権の目標であり、現在の保護貿易主義の背後に存在する本当の理由である。
この仮説は軍事産業系のシンクタンク、「新アメリカ安全保障センター(CNAS)」が2016年の大統領選挙の約1ヵ月後、次期トランプ政権に向けて提出した「未来の鋳造(Future Foundry)」という報告書で提言された内容に基づいている。
このレポートでは、アメリカの国防産業は製造業との有機的な連関を喪失しており、ロシアや中国に負けないためには、最先端のITを導入して、国防産業を再強化しなければならないとしていた。
しかしこの報告書では、国防産業の劣化した状況を総論的に解説するにとどまり、状況の深刻さを示す詳細な記述はなかった。
●10月に公表された新しい報告書
そのようななか、9月にまったく新しい報告書がトランプ政権に提出された。
これは内容が非公開の報告書だったが、10月にその一部が公開された。
2017年9月、トランプ大統領は「大統領令13806号」を出し、アメリカの国防産業の実態の調査を命じた。
この報告書は、これに対する調査結果として提出されたものである。
この報告書は、「合衆国の国防産業と製造業におけるサプライチェーンの弾力性調査とその強化に向けての報告書(Assessing and Strengthening the Manufacturing and Defense Industrial Base and Supply Chain Resiliency of the United States)」という非常に長い題名である。
これは国防総省を中心に、あらゆる省庁が協力して編成したタスクフォースによる報告書である。
目的は現在の国防産業の産業的な基盤を徹底して調査し、最先端の軍事力の維持が可能であるか査定したものだ。
国防産業の基盤の包括的な調査としては、60数年ぶりになるとのことだ。
●300を越える領域で格差が拡大
この報告書を見て驚くのは、アメリカの国防産業の劣化の実態が詳細に分析されていることである。
すでにロシアや中国との間では、300ほどの領域でアメリカの国防産業の劣化が進行しており、深刻な状況だという。
深刻さを認識してもらうために、いくつかの例を見てみる。
・数値制御工作機械のドイツ依存
精密兵器の製造にはなくてはならない数値製造工作機械はすべてドイツからの輸入に依存している。
・レアアースの供給は中国依存
2000年代初頭まではアメリカ国内でもレアアースの掘削産業は存在していたものの、いまはない。
精密兵器やIT機器にはなくてはならないレアアースは、すべて中国からの供給に依存している。
・ASZM-TEDA1添着炭
化学兵器や有毒ガス、また放射能ガスの防御機器の製造には欠かせない物質、「ASZM-TEDA1添着炭」の国内メーカーのほとんどは倒産しており、すでに一社しか残っていない。
「ASZM-TEDA1添着炭」は72種類の防御機器で使われている。
・精密兵器用IT基盤
精密兵器はプリントされたITの基盤を必要としているが、この分野でも米国内のメーカーはほとんどが倒産しており、一社しか残っていない。
300を越えるエリアがあり、延々と書くと長くなるのでこのくらいにとどめるが、報告書を読むとアメリカの国防産業の劣化の状況がよく分かる。
●倒産、熟練工不足、海外サプライチェーンの依存
このような劣化を引き起こしている最大の原因は、グローバリゼーションによって製造業が空洞化したことだとしている。
米国内の製造業では倒産が相次いだ結果、最先端の兵器の製造には欠かせない特殊部品メーカーが消滅しつつあるのだ。
たとえば、海軍艦艇のためのプロペラのシャフト、戦車の砲塔、ロケット燃料、ミサイル用の精密赤外線探知機などのメーカーはすべて倒産した。
その結果、最先端の兵器製造にはなくてはならないこうした部品の供給は、中国を中心とした海外のサプライチェーンに完全に依存した状態だ。
また現状では、装甲車や海軍の艦艇、軍用航空機の製造には欠かせないアルミプレートの生産も危機的な状態にある。
さらに、こうした兵器用部品メーカーの倒産とともに、働いていた熟練工の多くは解雇され、国防産業から去った。
特に、工作機械、溶接、エンジニアリングなどの分野が深刻な熟練工不足の状況にある。
一方国防総省は、機会を見て国防産業の現状把握に努めてきた。
しかしその調査は、今回の報告書のように詳細なものではなく、国防総省と契約しているロッキード・マーチンやボーイングのような巨大企業に調査をしただけであった。
国防産業の基盤がどのような状態にあるのか分からなかったとしている。
ロッキード・マーチンやボーイングは多くの種類の軍用航空機を生産しているが、その製造は無数の部品を供給しているメーカーに依存している。
これらのメーカーは国防産業に特化しているわけではなく、一般の製造業のメーカーだ。
グローバリゼーションによる国際競争に敗退し、生産拠点を海外に移転するか、または倒産してしまったのである。
その結果、ロッキード・マーチンやボーイングのような会社は、中国やEUを中心とした海外メーカーのサプライチェーンに、部品を発注しなければならなくなっている。
こうした、国防産業内部の脆弱性は詳細な調査を待ってはじめて明らかになった。
●2025年までに国防産業を再建する
こうした報告書だが、急速に発展する中国のテクノロジーと、ロシアの軍事システムに対する恐怖が滲み出ているのが分かる。
中国は「中国製造業2025」という巨大プロジェクトを立ち上げ、2025年をひとつのメドに、中国が最先端テクノロジーの製造業大国になるとしている。トランプ政権はなんとしても2025年までに、中国、ならびにロシアの動きを阻止し、アメリカが最先端テクノロジーで圧倒的な優位を確確立し、米国内の国防産業を再編しなければならないと考えているようだ。
こうした国防産業の脆弱性への危機とそれを乗り越えるための再編計画の推進こそ、トランプ政権がいま強く推し進めている、
自由貿易とグローバリゼーションの否定
に基づく保護貿易主義政策の背後にある最大の理由であることは間違いない。
今回の報告書の公表で、これが証明された。
●変更不能な保護貿易政策と加速する多極化
こうした状況なので、トランプ政権が現在の保護貿易政策を変更するなどということは、まずあり得ないと考えたほうがよい。
トランプ政権は自由貿易こそ米経済を支える基盤であることを理解しつつあるので、いずれ政策を転換するだろうとの希望的観測も主要メディアではときおり見られるが、そのようなことはまずないと見たほうがよい。
トランプ政権は、アメリカの軍事的覇権を永続化するために、国防産業の再建に必死に取り組んでいる。
彼らにとって自由貿易とグローバリゼーションは、アメリカの覇権を軍事的に弱体化させた最大の原因なので、同盟国との関係などあらゆる犠牲を払ってでも、これを阻止するつもりだ。
もちろん、トランプ政権が引き金を引いた保護貿易主義への動きは、各国に大きな波紋を巻き起こしている。
水面下で始まっている、ドルによる国際決済通貨システムから脱却する脱ドル化の動きはその一端だ。
それとともに、アメリカの同盟国から、こうしたトランプ政権を真っ向から非難する発言も相次ぐようになっている。
たとえばドイツ外務省だが、11月7日、ハイコ・マース外相は地方紙のインタビューで、
「今回の中間選挙での選挙運動は、米国社会がいかに分断されているのかを示しており、さらに推進した」
と述べた。さらに外相は、
「米国は欧州域外の最も重要なパートナーの一国であり続けることに変わりはないが、その関係を再検討する必要がある」
とした。そして、「米国の国際条約撤退や制裁関税などの措置に対し、欧州結束が唯一の打開策だ」と強調した。
 またドイツ産業連盟(BDI)は、「貿易摩擦の終焉みえず」と題する声明を発表した。
ディーター・ケンプ会長は
「ドイツ産業界は、米国から厳しい逆風を受け続けることになる。
多くの民主党議員もトランプ大統領の通商政策を支持していることから、米国の貿易政策が保護主義から方向転換することは、想像できない。
米政府の対立路線は世界経済にとって脅威で、今後も続くだろう」とコメント。
さらに、
「貿易摩擦が米国企業に対しても利益をもたらすことはなく、米政府の制裁措置が米国内の景気にマイナスの影響を与えるのは時間の問題だ。国家の安全保障にかこつけて、一方的に関税を課すことは誤りだ」と指摘した。
●多極化の動きの中心のひとつは日本か?
このように、トランプ政権の保護主義を強く非難する発言は、同盟国の多くの政府関係者から相次いでいる。
フランスのマクロン大統領もトランプ政権の批判を躊躇しなくなっている。
だからといって、保護主義の理由が軍事的覇権維持のための国防産業再編と強化であるとしたら、トランプ政権の方針が変化することなどあり得ないことだ。
むしろ、保護主義の動きは加速するだろう。
そして、その余波として、各国の脱アメリカ化と多極戦略も加速するはずだ。
そして、このような多極化の中心のひとつになっているのは、日本の安倍政権の動きである。
この方向がはっきりと見えたのが、10月26日の安倍首相の訪中である。
「競争から協調へ、日中関係を新たな時代へ押し上げたい」
とする安倍首相は李克強首相と会談し、通貨スワップ協定の再開や、第三国でのインフラ共同開発で合意した。
ちなみに「通貨スワップ協定」とは、金融危機などによる自国通貨の暴落を回避するために、両国の通貨を相互の中央銀行が持ち合う協定のことだ。
たとえば、なんらかの理由で人民元が大幅に下落した場合、中国の人民銀行は手持ちの円を市場で売って人民元を買い支え、下落幅を抑えることができる。
また、日銀も同じことができる。
また、「第三国でのインフラ共同開発」とは、言葉の使用は回避したが、中国が
「一帯一路」構想
で推し進めているインフラ建設への協力である。
これで中国と日本は、「一帯一路」でがっちり組む方向に動き出したということだ。
そして、さらにここで注目されるべきは、安倍政権のその後の動きである。
訪中から帰国直後、訪日したインドのモディ首相と会談した。首脳会談では、日本とインド両国の経済や国防への協力が合意されたほか、ミャンマー、バングラデシュ、スリランカのインフラ建設における両国の協力は合意された。
この3ヵ国は中国の「一帯一路」によるインフラ建設も進んでいる地域である。
ということでは、ある意味で日本が仲介役となりながら、インドのインフラ建設構想と中国の「一帯一路」になんらかの協力関係ができる可能性が出てきた。
さらに日本はロシアとも良好な関係にあり、領土問題はあるものの、経済協力は進展している。
すると、中国、インド、ロシアは日本が仲介することで、これまでにないような新しい経済協力関係が築かれる可能も出てきた。
●ロシア、中国、朝鮮半島を結ぶ行路
これは
中国、インド、ロシア、日本が結ばれる新たな経済圏の出現
といっても過言ではないかもしれない。アメリカには依存しない本格的な多極化の動きになるはずだ。
そして、すでにこうした動きの成果も出てきている。
日本の主要メディアではほとんど報道されていないようだが、
鳥取県と韓国江原道、中国吉林省、ロシア沿海地方、モンゴル中央県
の5地域が共同発展策を探る
「第23回北東アジア地域国際交流・協力地方政府サミット」
が10月30日、ロシア・ウラジオストクで開かれた。
そこでは、境港と韓国の東海、ウラジオストクを結ぶ定期貨客船航路の延伸による物流ルートの構築に向けて連携することで合意した。
さらにウラジオストクからは、ロシアのシベリア鉄道でヨーロッパにまでつながる。
また、中国の吉林省も鉄道でウラジオストクにつながっている。
これが完成すると、
日本、朝鮮半島、中国、ロシアが単一の貿易ルートで結ばれる
ことになる。いわばこれは、日中韓ロの「一帯一路」のような構想である。
しかし、日本のこのような動きは保護主義と中国、ロシア排除のトランプ政権の基本政策からは大きくずれている。
ということでは、今後は日本の安倍政権がトランプ政権による攻撃のターゲットとなるということだ。
ただ攻撃は、表だった安倍政権批判ということにはならない可能性のほうが大きい。
予想外のところから日本を代表する企業が攻撃されたり、また日本経済の弱いエリアが締め付けの対象になるかもしれない。
昨今、カルロス・ゴーン会長の逮捕で日産とルノー、そして三菱自動車の三社アライアンスの行方に暗雲がただよっている。
この動きもこうした文脈で見たほうがよいだろう。

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アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。

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