2020年03月24日

田中宇: 人類の7割が感染し2年以上続くウイルス危機

田中宇: 長期化するウイルス危機
人類の7割が感染し2年以上続くウイルス危機
2020年3月11日   
田中宇
ドイツの大衆紙ビルトによると、メルケル首相は3月10日に独議会の非公開の委員会で「ドイツ国民の60-70%が新型コロナウイルスに感染するだろう」との予測を述べた。ビルトによると、ドイツのシュパーン保健相も、もし今後もずっとワクチンなどの予防策が出てこない場合、メルケルの「国民の60-70%が感染」が正しい予測になると認めた。メルケルがこの予測を述べたとき、委員会の出席者の全員が息をのんで言葉が出てこず、しばし沈黙が続いたという。 (60 bis 70 Prozent in Deutschland werden sich infizieren) (Angela Merkel estimates that 60% to 70% of the German population will contract the coronavirus)
これはドイツだけの話でない。世界的に、人類の60-70%が新型ウイルスに感染するという予測になる。メルケルが最初に指摘したことでもない。2月末には英国政府の保健省が、最悪のシナリオとして「英国民の80%が新型ウイルスに感染し、50万人が死ぬ」と予測する報告書を作成し、わざわざマスコミにリークしている。2月末には米ハーバード大学の研究者(Marc Lipsitch)も「人類の40-70%が新型ウイルスに感染し、感染者のうち発症した人の1%が死ぬ」とする予測を発表し、米マスコミで報じられている。 (Coronavirus could kill half a million Britons and infect 80% of UK population, government documents indicate) (Coronavirus may infect up to 70% of world's population, expert warns)
これらの米英独での予測を総合すると、ワクチンなど予防策が出てこない限り、人類の40-80%が新型ウイルスに感染する。人類の60-20%は感染しないことになる。どんな人が感染しないのか詳述されていないが、大人より免疫力が強い子供たちでないかと推測される。感染しても、80%は無発症か、ごく軽症のまま終わる。無発症や軽症の人からも他人に感染するが、無発症者は体内のウイルスの量が少ないので感染力が非常に弱いと考えられている。感染者のうち残りの20%(人類の12%前後)が中程度から重篤に発症する。中程度以上の発症者の25%、つまり人類の3%前後、感染者の5%前後は入院が必要になり、入院者の10%(人類の0.3%)が死亡すると、米国病院協会 (AHA)の非公式予測の報告書に書いている。致死率は人類の0.3%、感染者全体の0.5%ほどになる。 (Leaked Covid-19 Documents: Hospitals Prep For 96 Million Infections & 480K Deaths)
ドイツでは、メルケルの予測とは別に、ベルリンのウイルス専門家クリスチャン・ドロステン(Christian Drosten)も同様の予測をしており、ドロステンは「ドイツ国民の60-70%が感染するまでに2年以上かかる」と予測しているという(原典が見つからず孫引きのみ)。彼はまた「ドイツでのウイルス発症の増加のピークは今年の6−8月になる」とも予測している。ワクチンができない限り人類の70%が感染するという見方は、専門家の多くにとってそれほど意外なものでないだろう。 (Merkel Expects 60-70% Of Germans To Be Infected With Coronavirus) (Virologe Christian Drosten zu Coronavirus: "Maximum der Fälle von Juni bis August")
私の近所にいる小さな個人病院の開業医も、今年2月初めの時点ですでに「人類の多くが感染するするだろう。早めに感染して体内に抗体を作ってしまった方が良い。再感染があり得るとのことだが、感染した方が抗体ができるので良いことに変わりはない」とか「新型ウイルスの遺伝子には自然界にない塩基配列の部分があり、自然にできたのでなく実験室で作られたものだろう」と言っていた。彼は私の記事の読者でない。 (Why I Want To Be Infected With The COVID-19 Coronavirus And You Should Too) (Coronavirus Contains "HIV Insertions", Stoking Fears Over Artificially Created Bioweapon)
人類の60%以上が感染するまでウイルス危機が続き、ワクチンなどの予防策が出てこない限り、ウイルス危機はこれから2年続くことになる。その間、国際的な人の移動が制限され、サービス業や飲食、エンタメ、観光、学校、議会、交通など、多くの産業や社会機能が制限され、世界経済に大打撃を与える。グローバリゼーションが劇的に終わる。金融危機が大幅に進行し、米国覇権体制が終わる。今起きている金融危機は、危機の序の口にすぎない。分析せねばならないことが無数にあるが、今回はここまでで配信する。

田中宇の国際ニュース解説
http://tanakanews.com/200311virus.htm










英国式の現実的な新型ウイルス対策
2020年3月16日   
田中宇
1月23日に中国政府が発祥地の武漢を閉鎖して新型コロナウイルスの感染拡大が大変なことであるとわかってから2か月近くがすぎた。
この間、ウイルス感染は中国各地、日韓などアジア諸国、そして欧米や中東アフリカへと拡大した。
金融危機や世界不況の引き金を引きかねないのでパンデミック宣言を後回しにしていたWHOも、3月11日に世界的に株価が暴落して「WHOのせいで金融危機になった」と言われない状態になった日にパンデミック宣言した。別の言い方をすると、中国の傀儡勢力であるWHOは、中国での感染拡大が一段落(の歪曲)して習近平が「勝利宣言」(3月10日の武漢視察)できる状態になり、次はイタリアなど欧州や米国への凄惨な急拡大が確定的になって「中国の勝利と欧米の敗北」が見えてきた(加えて、欧米の混乱が注目され、このウイルスの発祥者である中国への非難どころでなくなった)ので、3月11日にパンデミック宣言した。今回のウイルス危機は長期化が必至なので、パンデミック宣言により、国際的な人的交流や、冷戦後のグローバリゼーションの体制が大きく阻害・破壊されてひどい世界不況になる傾向が強まった。 (Dow enters bear market as pandemic declared)
この間、新型ウイルスに対する各国の政策の違いを見ていると、いろいろ感じることがある。その一つは「アングロサクソン諸国(米英加豪NZ)と日本の、人口に占める感染者数の割合がおしなべて低いこと」だ。世界の国ごとの感染者数の一覧を見ると、各国の百万人あたりの感染者数の割合は3月16日昼の時点で、日本が6.6、米国が11.4、英国が20.5、カナダが9.0、豪州が11.8、ニュージーランドが1.7だ。一方、西欧諸国は、イタリアが409.3、スペインが167.8、フランスが83.1、ドイツが69.4、スイスが256.2、ノルウェーが231.7、デンマークが149.2などだ。アングロサクソンと日本は、感染者の割合が、欧州諸国よりひと桁少ない。 (Coronavirus Update - Worldometer)
これを「アングロ日本連合」みたいな感じでとらえず、単なる偶然と考えることもできる。
だがアングロサクソンの5か国は第二次大戦中から諜報分野で「ファイブ・アイズ」の非公式な同盟関係を続けて「米英覇権・軍産ネットワーク」を形成している。この同盟は戦時中、まさに日本を倒すために結成されたが、戦後、対米従属、正確には対軍産従属の傀儡国に変質した日本は、事実上、今やファイブ・アイズの準加盟国だ。そして、米英覇権体制の終わりや覇権多極化につながりそうな今回のウイルス危機は、医療や保健衛生の問題を超えた、覇権や諜報の問題だ。今回のウイルスが人為的に(軍産によって)植え込まれた可能性もあり、まさに軍産や米英覇権の話である。 (中国のアジア覇権と日豪の未来) (武漢コロナウイルスの周辺)
ならば、ウイルスへの対策も、アングロ日本連合の諸国で横並びに行われても不思議でない。この連合のウイルス対策は「感染者数の統計を少なめに出し続けること」である。米英が西欧諸国より医療体制が格段に良いとは言えないので、米英の感染者数の人口比が少ない理由は医療体制の違いでなく、ウイルス検査をどの程度熱心にやるか、感染者数を少なめに出したいかどうかといった政治姿勢の違いだ。医療体制の良し悪しの違いは、死者数の違いとして現れるだろうが、感染者数の違いには結びつきにくい。感染の多くは家庭内や職場、社交の場で起きている。院内感染は比率として少ない。
日本は医療体制が良いが、感染者っぽい症状が出て病院に行っても、いくつもの種類の発症のすべてが起きていないとウイルス検査を受けられず帰宅させられる。今回のウイルスは発症時の症状の組み合わせが人によってかなり違うのに、政府がそれをわざと無視し、杓子定規で非現実的な決まりを作って感染者にできるだけ検査を受けさせず、統計上の感染者数を大幅に少なくしているのが日本の現状だ。先週今週あたり、知り合い、もしくはそのまた知り合いがそのような目に遭っているという人が増えている。発症したのに検査してもらえない人が、すでにかなりいそうだ。日本全体で数万人とか十万人とかか?。軽症と重症の全体的な割合から考えて、その5倍ぐらいの人(25万から50万人?)が、無発症もしくはごく軽症(ほとんど無自覚)で、すでに感染しているはずだ。もっと多いかもしれない。
1月に中国からウイルスをうつされて以来2か月が経ち、日本は感染増加のピークに近づいている。1日10人程度の現在の感染者統計の増加数は、あきらかに少なすぎる。前回の記事に書いたように、ドイツの専門家は6−8月が感染のピークだと予測している。欧州は日本より1か月ぐらいの遅れで感染が広がっている。日本の感染増加のピークは5−7月ごろか。ピークを越えると増加の速度が減り、「国民の6−7割が感染」の完成形に近づく。世界的に、夏から秋にかけてが完成形への到達時期でないか。その前にワクチンができて使用開始されれば感染増加が止まるが、ワクチンは今年中にできそうもないので、完成形まで感染拡大する。 (人類の7割が感染し2年以上続くウイルス危機)
この件について、アングロサクソンの元祖である英国のジョンソン首相が3月15日に衝撃的な発表をした。ジョンソンは、英国民の6割が感染する完成形に至る事態を避けられないと表明し、ウイルス危機は今夏に完成形になっていったん下火になるが、これまでのインフルエンザや風邪と同様、11月ぐらいから来春まで再び感染発症する人が出てきて、ウイルスは脅威を弱めつつ何年も再発し続けるとの予測を発表した。地域や都市を閉鎖して住民を外出させない隔離政策をとると、一時的に感染者の増加が抑えられるが、閉鎖や隔離を解いたら再び感染者が増えてしまうと指摘した。 (Coronavirus: 60% of UK population need to become infected so country can build 'herd immunity', government's chief scientist says) (UK coronavirus crisis 'to last until spring 2021 and could see 7.9m hospitalised')
そしてジョンソンは英国の対応として、健康な若者と、そうでない人々(高齢者と持病持ち)とを分けて、別々の過ごし方をする策を提案した。感染しても発症しにくい健康な若者(40歳以下)は、感染して抗体を体内に作ってもらい、英国民のできるだけ多くが「集団免疫」を持つことで、今冬のウイルス再発の事態を乗り越える。社交の制限などをやるが、それは感染拡大の遅延策であり、感染者が急増して病院が満杯でパンクする事態を防ぐ。一方、感染したら重症化しやすい高齢者や持病持ちの人々は、他の人々との接触をできるだけ減らした状態で4か月から半年をすごして感染を防ぎ、その後は集団免疫を持った若者に支えられて生きる。 (Coronavirus: Up to four months self-isolation for over-70s)
ジョンソンは英国を代表する権威ある医療専門家を従えて発表を行い、これが科学的で正しい政策であるという印象を打ち出そうとした。内外のマスコミや反対論の人々は「次の冬に再発するとの予測は全く不確定だ」「人々の体内に恒久的な集団免疫が作られるかどうか、まだわからない」「感染したら重症や死に至る若者もいるのだからこの策は間違っている」「感染対策を放棄すると言ったも同然」「ウイルスに対する敗北宣言だ」などと非難した。だが私から見ると、ジョンソンの発表は、確かに無策ではあるものの、一つの具体的・現実的なシナリオを提示している。放置的なジョンソンの策と対照的なのは中国がやっている強烈な閉鎖・隔離策だが、それをやっても、それをやめた時に感染が拡大するのだから根本的な解決策にならない。他の諸国も無策であることに変りなく、事態は結果的に似たものになると考えられる。 (I'm an epidemiologist. When I heard about Britain's `herd immunity' coronavirus plan, I thought it was satire)
ドイツでは「国民の60-70%が感染する。それまでに2年かかる」との予測が公式的なものになっている。英国の予測と似ている。これらに対して「何の根拠があるのか?。いい加減なことを言うな」という批判が世界的にある。しかし世界的に、英独などが出した一群の予測以外の具体的な予測は出されていない。日本政府は「今が正念場だ」と1か月前から言い続けることしかやっていない。英国は、科学について国際的な権威の国だ。英国は「科学という名のプロパガンダ」の世界体制を創設し、それを維持する科学の覇権国だ。その英国の首相が「人々の60%が感染して集団免疫をつけるしかない」と正式に提案したのだから、それが正しいと考えるべきだ。新型ウイルスについては不明な点がとても多く、確定的な予測や対策を出すのは不可能だ。根拠が薄いからといって、それを間違いだと言う人は、今の状況の根幹を理解していない。 (人類の7割が感染し2年以上続くウイルス危機)
安倍首相の日本政府は、今が正念場としか言わないし、感染者統計も明らかに少なすぎて、とても不正でインチキな感じがする。しかし実のところ、日本政府がやっている感染対策は、現実策として悪いものでない。欧州など多くの国で、飲食店や歓楽街が閉鎖されているが、日本では大半の飲食店が営業を続けている。年寄りの客は減ったが、若者はけっこう来ている。人気店は相変わらず混んでいる。これは、ジョンソン英首相が言うところの、若者たちに集団免疫をつけさせる策になっている。アングロ連合の忠実なるしもべ・準加盟国である日本は、連合体の主導役である英国が提案した策を、静かに着実に実行している。これは偶然なのか、それともアングロ連合側から示唆されたとおりに安倍の日本がやった結果なのか?。日本と米国の検査拒否による感染隠しの手口が似ているので、トランプが安倍に入れ知恵してやらせた可能性もある。 (Coronavirus testing: which approach is the most effective?)
他の諸国は、感染者の増加傾向を抑えて病院を満杯にしないようにするため、飲食店を閉店させている。日本は、飲食店を開けっ放しにして感染者の増加を放置する一方で、感染を調べる検査をやらせないことで、表向きの感染者の増加を抑えて病院を満杯にしないようにしている。飲食店を閉めると感染が増えないのでなく、増加の速度が抑止され、病院を満杯にしない。最終的に感染者が増える点では、飲食店を閉めても閉めなくても同じだ。病院を満杯にしないのが目的なら、日本の開店放置のやり方でも良いことになる。 (Leaked Covid-19 Documents: Hospitals Prep For 96 Million Infections & 480K Deaths)
日本などアングロ連合諸国は、感染者数を少なくごまかす不正をやっている。これは一見悪いことだが、現実的に考えると、検査数を増やして感染者数を増やすと、軽症者で病院が満杯になりかねない。感染しているが軽症な人を入院させずに帰宅させると、感染者の自宅周辺がパニックになる。パニックを発生させても感染拡大の抑止にならない。しかも、感染者を入院させろという社会的圧力を強まり、病院が満杯になってしまう。ならば、検査せず公式な感染者に仕立てないことが現実的な選択肢になってくる。 (Coronavirus Forces New Travel Curbs, Bans on Large Gatherings)
感染しているのに検査を受けられないので感染を知り得ずそのまま暮らしている人は、検査して感染を知って引きこもる人よりも、他人に感染を拡大する傾向が大きい。だがその一方で、いったん陰性になってかなり経ってから再び発症したり陽性になるケースもあり、ウイルスの性質としての感染状態の「完全な終わり」が確定できない状態のままだ。一人ひとりの感染者に厳密な対応をしていると、それぞれに対して1か月以上かかり、対応する当局の側がパンクしてしまう。
中国は、共産党の強力かつ広範な独裁体制を活用し、人口の半分を閉鎖・隔離状態にして、感染拡大をかなり止めている。しかし今、閉鎖を解くと感染が再拡大する事態に直面し、なかなか閉鎖を解いていけない。北京市などは、いったん開けたが再び閉めている。中国政府は、閉鎖を解いて経済活動を再開していると強調しているが、その中には、習近平政権の「勝利」を喧伝するための「見せ物」としてごく一部が再稼働しているだけのところも多い。中国は、閉鎖の再開に苦労している。加えて中国は、重症な発症者だけを「感染者」として扱っており、日本と異なるやり方で感染者数を過少に発表することで「勝利」感を演出している。世界は、新しい覇権国である習近平の中国に媚びて、中国の勝利と再開の演技を鵜呑みにしている。「アップルは、中国以外の世界中の店舗を閉店した。中国の店舗だけは再開を維持している(実は開店休業)」といった報道が象徴的だ。そんな中、英国のジョンソンは、中国のやり方は良いものでないと指摘している。 (Apple Closes All Its Stores Outside China Over Coronavirus)
検査したがらない日本と対照的に、韓国は新天地教会の集団感染以来、ものすごく積極的に検査を拡大し、統計上の感染者は増加したが政策の透明度が上がって成功だったとされている。日本はアングロ連合と一緒に6割感染・集団免疫のシナリオに沿って検査回避の感染者隠しをやり、日本と対照的に韓国は積極検査の策をとり、EU諸国がそれを見習ったという流れになっている。しかし最近は韓国も感染者の増加幅が減ってきた。韓国の感染拡大は山を越えて終わりつつあるのか?。それは考えにくい。韓国の感染者は8千人台だ。こんな少数で終息するとは思えない。韓国は、感染者を積極的に統計に載せる政策を微妙に変えた可能性がある。 (What America Could Learn from South Korea's Coronavirus Struggles)
このほか、エジプトやカンボジアなどの発展途上諸国も、検査をできるだけせず、感染者の統計数を増やさない政策をとっている。エジプトの統計上の感染者数は現在126人だが、エジプトを旅行した日本人が何人も感染している。エジプトの実際の感染者は何万人・何十万人もいるはずだ。カンボジアの統計上の感染者数は12人だ。フンセン首相は「我が国には感染者がいない」という姿勢を貫いている。行き場を失った国際クルーズ船を2月13日に受け入れた時からそうだった。だが、受け入れたクルーズ船の乗客の中に感染者がいると後でわかったし、その後カンボジアから帰国した日本人の感染もわかった。カンボジアにもかなりの数の感染者がいるはずだ。発展途上国の多くは、できるだけ検査をせず感染を放置している。その結果、それほど大変なことにならないのなら、これが現実的な策なのかもしれない。 (世界に蔓延する武漢ウイルス 2)

田中宇の国際ニュース解説
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長期化するウイルス危機
2020年3月6日   
田中宇
新型コロナウイルスの感染拡大が長期化する可能性が高まっている。2月の中ごろには、3月に感染拡大が終息するといった予測が日本や中国で出ていたが、今やその可能性はとても低い。中国は発症者(中国では発症していない人を感染者に含めていないので、中国の「感染者」の人数は実のところ「発症者」だ)の日々の増加がかなり少なくなっており、これを見て「事態は終息に向かっている。中国の3月終息予測は正しい」という見方もあるが、それは間違いだ。 (悲観論が正しい武漢ウイルス危機の今後)
中国政府は、都市や地域、村落、集合住宅などを強力に封鎖して自国民の行動を極限まで制限する策をとることにより、感染の拡大を低くしてきた。これ自体は、世界へのウイルス蔓延を防いだ良策(ウイルスの発生源としての責任をとった策)だったが、中国が今後国民の行動制限を解いていくと再び感染の拡大がひどくなる。未発症・無発症なウイルス感染者が多数いるはずで、そこから感染が再拡大する。これは不可避だ。感染をできるだけ拡大せぬよう、時間をかけて少しずつ制限を解いていくしかないが、それは長い時間がかかる。閉鎖する時より、閉鎖を解いて再開する時の方が大変だ。日本政府が2月27日に全国の学校の休校を決めたとき「休校する時より、感染再拡大の恐れなど、再開する時の方が大変だ」と言われたのと同じだ。 (ウイルス戦争で4億人を封鎖する中国)
制限をかなり解いても感染が拡大しなくなった時が「終息」であるが、それはまだかなり先だ。しかも、中共が国内の行動制限を解くと、海外からの人の流入も再開され、流入する外国人や帰国者の中には未発症な感染者が一定の割合で含まれており、そこからも感染が再拡大する。短時間で結果がわかる検査キットが出現しない限り、入国時に見分けることは不可能だ。中国だけ終息しても、世界が終息していなければ意味がない。
中国以外の世界は、まだまだこれから感染が拡大していく。3月中に終息の見通しが見えてくることはない。4月末でも無理だろう。日本でも、感染症の専門家たちが「3月中に終息する可能性は低い」とか「新型コロナ対策は、年単位で考えなければいけない」といった見方を表明し始めている。いちど感染したら体内に「生涯免疫(死ぬまで再感染しない免疫)」ができるものなのかどうか、現段階でまだわかっていないので、(ほとんどの人は無発症か軽症で)全人類が感染したらそれがこのウイルス危機の終わりなのかどうかもわからない。感染したら(ほとんどの場合)生涯免疫ができるのだとしても、全人類が感染するまであと何か月、何年かかるのか??、という話になる。 (ウイルスとの戦いは年単位か) (3月末の終息は困難、感染さらに拡大の恐れ)
2回感染した人がいたと中国で発表されているが、どんな人が2回感染するのかわかってない(2回感染の割合は低いようだが)。暖かくなったら下火になるのかどうかもわからない(今が夏の南半球や熱帯諸国でも感染拡大している)。つまり、終息の時期は専門家でもまったくわからない。時期だけでなく、終息していく道筋(全人類の感染なのか、全人類でなく人類の何割かの感染で終わるのか、ワクチンの完成で解決するのか)すらわかってない。人類は、とんでもない事態に直面している。今夏の東京五輪の前にウイルス危機が終わることはない。「年内」もたぶん無理だ。 (How The Pandemic Crisis Will Probably Develop Over The Next Year)
3月6日、日本政府が中国と韓国からの入国者を2週間隔離する政策を打ち出し、韓国も対抗措置を行った。この入国制限も、事態が長引くと日本政府が予測していることを示している。間もなく終息するなら、今から入国制限をする必要などない。安倍政権は、中韓からの入国制限を国内の専門家会議に諮らずに決めた。ウイルスの脅威が増したから入国制限したのでない。脅威増加の対策だったら専門家会議に諮るはずだ。これはおそらく日本の一存で決めたことでなく、日中韓で秘密裏に話し合って決めた共同体としての決定だ。韓国の怒りは演技だ。中国は沈黙している。
今後、ウイルス危機が何か月か続くと、世界経済の成長率はマイナス20%とか、そういった数字になる。株価は今後もどんどん下がっていく。今のところ中央銀行群がQE策で造幣した資金で株と債券を買い支えているが、いずれ力尽きる。ウイルス危機が長引くほど、世界的な金融大崩壊の可能性が高くなる。債券もジャンク債から崩壊(金利高騰)していく。株と債券の巨大なバブルが破裂し、米国の金融覇権が崩壊する。こちらも、すごいことになるのが確定的だが、最終的にどんな事態が立ち現れるのか、予測が全く出ていない。経済専門家は、そもそもきたるべきバブルの大崩壊を予測していない。医療分野と異なり、権威ある経済専門家は世界的に、ほぼ全員が「詐欺師」か「小役人」である。債券金融システム自体が米英発案の詐欺だ。 (ウイルスの次は金融崩壊) (Coronavirus raises the risk of real trouble in corporate bonds)
今後の展開は全く不透明だが、ウイルス危機がこれから何年も続き、巨大な金融崩壊が発生するという前提ですべてのことを考えていった方が良い事態になっている。すべてが終わった後、世界がどんな風になっているか想像がつかない。幸いなことに今回のウイルスは、ほとんどの人(とくに若者)にとって発症時の重篤性が低いので、すべてが終わった後でも人類の大半が生きている。事態はおそらく覇権体制の転換につながり、これは本来(歴史的先例)なら世界大戦(核戦争)によって引き起こされる転換だが、ウイルス危機は核戦争よりはるかにましだ。75年前の世界大戦では若者たちがたくさん死んだが、今回は若者たちが生き残るので、危機終息・転換後の世界経済の発展がやりやすい。 (不確定がひどくなる世界)
ウイルス危機が今後ずっと続くとなると、対ウイルス政策への見方・評価のしかたも変わってくる。今は、中国での強硬な封鎖政策によって新たな発症者の増加が減っている。対照的に、日本では封鎖が全く行われず、人々の自主的な行動規制に任されているが、日本政府はできるだけウイルス検査をしないことで感染者数の統計をごまかしており、本当の発症者は統計の何十倍もいると思われる。検査を積極的にやっている韓国では感染者が約6千人で、人口比で考えると日本で1万人が感染していても不思議でないが、日本の統計上は360人しかいない(韓国も全国民を検査したわけでないので、日本の実際の感染者は10万人以上かも。それでも国民の0・1%だが。多くは無症状)。
中国の強硬封鎖策と、日本の放置・隠蔽策が対照的だ。中国も無発症の感染者を統計に入れてないし、数字自体のごまかしもありそうなので隠蔽しているが、国民に大きな不便をかけつつ必死で封鎖を続けているのは確かだ。きたるべき多極型世界における日本の新たな「おかみ」である「中共さま」の気の早い提灯持ちたち(中国在住の日本狗とか)が「中国に比べて日本の政策は劣っている。日本はダメだ」と上から目線で言っている。
しかし、強硬封鎖をずっと続けるわけにはいかない。長期化するほどマイナス面が大きくなる。封鎖を解いていく時に感染が急拡大しかねない。家庭内のウイルス感染は止められないし、運動不足による健康被害も増す。国民経済的にも大変なマイナスだ。中共が(とくに湖北省の)強硬封鎖をしなかったら、世界のウイルス被害は何百倍もひどいものになっていた。その点で強硬封鎖は良策だった。中共中央としては、ウイルス危機を利用して国民の行動を監視する体制を一気に構築できる「独裁強化の利点」もあった。しかし、中国から離れている日本で同じことをやる必要はないし、やれない。中共は町内会まで下部組織があるので強硬封鎖をやれたが、日本にはそんな強い組織がないし不必要だ。
(少し前まで「米国の政策は良いが日本はダメだ」と言う「米国通」の上から目線発言もあったが、今では米国も検査をやらせずに感染者数を隠蔽しているし、隠蔽を乗り越えて感染者が急増して日本よりダメな事態になっている。日本にとって「先代のおかみ」だった米国の覇権衰退を象徴している) (The Official Coronavirus Numbers Are Wrong, and Everyone Knows It)
ウイルス危機が今後何年も続くなら、強硬策はできるだけやらない方が良い。ウイルスの特性がわからないままなので答えが確定しない。ならは、国民生活をできるだけ残した方が良い。感染者数のごまかしは、国民のパニックを悪化させない精神衛生上の利点もある。日本はこれから発症者が急増して隠蔽が破綻し、隠蔽策を後悔することになるのか??。わからない。逆にもし今後も事態が急に悪化せず隠蔽が粛々と続くなら、それは「次善の策」だったといえる。隠蔽策の犠牲者として、本当は新型ウイルスで死んだのに死因をごまかされる人が増えるだろうが、隠蔽しなかった場合に病院が満杯になって入院できず死ぬ人が増えるのと比べてどっちが悪いのかわからない。
若者たちは発症しないので従来通り人混みに出ている人も多い。無発症だが感染している若者が、無自覚なまま高齢者に感染させる「犯罪行為」「殺人」をやっていると批判されている。若者から見れば、自分たちが払った年金や健康保険の掛け金を「浪費」してしまう人々がウイルスの犠牲になって減っていく。(年金の基金は、投資先の金融商品がこれからのバブルの大崩壊で破綻していくので、結局のところ若者たちが年金を受け取れないことには変わりがないのだが) 今回のウイルス危機は、核戦争の代わりに起きている「隠然世界大戦」だ。今は平時でない。核戦争ほどでないが、死ぬ人が急増する事態だ。

田中宇の国際ニュース解説
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新型ウイルスとトランプ
2020年2月27日   田中 宇
アフガニスタンで、米国とタリバンの停戦がうまくいっている。トランプの米政府は、基本戦略である世界からの撤兵を進めようと昨夏、タリバンと交渉して停戦から米軍撤退につなげようしたが、当時はまだ米政界で軍産複合体の力が強く停戦合意できず、9月に米側が交渉を破棄した。その後、トランプは10−12月に自ら弾劾騒動を誘発して稚拙な弾劾決議を軍産傘下の民主党にやらせて自滅させ、トランプ陣営が容疑者のロシアゲートを軍産・諜報界が容疑者のスパイゲートに転換させ、世界撤兵に反対してきた軍産の力を弱めることに成功した。同時期にトランプはシリアから撤兵した。今年1月、トランプはイランのスレイマニを殺害してイランを激怒させて反米の方向に誘導し、イラクで駐留米軍撤退運動を引き起こし、イラクからの米軍撤退も時間の問題になった。 (Afghans Celebrate as US-Taliban Reduction of Violence Holds) (自分の弾劾騒動を起こして軍産を潰すトランプ)
そして米国は1月から、アフガンでもタリバンとの停戦交渉を再開し、2月22日から1週間の停戦を開始した。01年のアフガン侵攻以来、本格的な停戦は初めてだ。1週間の停戦がうまくいくと、停戦はさらに延長され、米軍撤退につながっていく。停戦が合意されたとたん、昨年9月に行われたものの結果をめぐって紛糾し未決になっていたアフガン大統領選挙も、5か月ぶりに現職のガニ大統領の勝利で決着がついた。アフガニスタンは米軍侵攻から19年ぶりに、米軍撤退とその後の安定に向かって進み始めた。 (Is Donald Trump About to Make Peace with the Taliban?) (Afghanistan Confirms Ashraf Ghani Has Won Second Term as President)
アフガンで停戦が発効している最中の2月24−25日に、トランプはインドを初めて訪問した。米国とインドは高関税をかけあって貿易戦争してきたが、貿易面での協定など新展開は何もなかった。トランプの目的は経済でなく、インドに対して「米国撤退後のアフガニスタンの再建に参加してほしい。米軍がうまく撤退できるよう協力よろしく」と頼みに行ったのだろう。 (Despite Trump's Visit, A U.S.-India Trade Deal Isn't Close) (ユーラシアの非米化)
トランプは最近、昨年9月にインドのモディ首相が国連総会出席で訪米した時に開いたインド系米国人の大集会にわざわざ参加するなど、インドと仲良くする演技を派手にやっている。半面、インドの敵であるパキスタンや、その背後にいる中国に対しては冷淡だ。しかし実のところ、米国のタリバンとの和解やアフガン撤兵で得をするのはパキスタンと中国であり、インドではない。アフガニスタンで最大の軍事・政治勢力であるタリバンは、もともとパキスタンが創設した組織だ。米国がタリバンと和解するにはパキスタンとの連携が必須だ。トランプは表向き親インド・反パだが、実質はそうでもない。インドは、米国のアフガン撤退によって開いた国際政治力の空白を中国パキスタンが埋めて台頭と予測し、恐れている。トランプは、懸念するインドをなだめに行ったのだ。 (中国がアフガニスタンを安定させる) (トランプと露中がこっそり連携して印パの和解を仲裁)
米国の撤退後、アフガニスタンは中国、ロシア、パキスタン、中央アジア諸国、イランによって安定化がはかられる。主導役は中露だ。トランプのアフガン撤退は、イラクやシリアからの撤兵と並び、中露イランを強化する多極化・米覇権放棄策の一つである。インドは、トランプの要請通りにアフガン再建に協力する場合、中露など非米諸国と仲良くし、多極化の流れに乗らねばならない。トランプはインドに「米国より中露と仲良くしてやってくれ」と言いに行ったようなものだ。「インド太平洋」と銘打った、米国の中国包囲網は全くの見せかけである。 (Will China and India Collaborate or Feud Over Afghanistan?) (中東インド洋の覇権を失う米国)
米軍は今後、アフガン撤退と同時に、インド洋の公海警備の任務からも外れていくだろう。海賊の脅威があるインド洋を航行する日本など同盟諸国の商船は、これまで米軍に守ってもらえたが、今後はしだいにそれがなくなる。だから日本は自衛隊の艦船をインド洋・中東に派遣せねばならなくなった。自衛隊の派兵は「米軍と一緒に戦争する」ためでなく逆に「米軍が撤退した後の航路の安全確保」のためである。中国や韓国も航路防衛のためにインド洋に海軍を出しており、日本はこの面で中韓との協力が不可欠だ。中国はすでに安保面で日本の「仮想敵」でなく反対の「友好国」である。米国のアフガン撤兵は世界の覇権構造を転換している。 (Japan orders Self Defense Forces to guard ships in Middle East) (米国の中国敵視に追随せず対中和解した安倍の日本)
1月23日に中国政府が新型コロナウイルスの蔓延を止めるために武漢と湖北省を封鎖し、国内に非常事態を敷いた後の2月2日、トランプはポンペオ国務長官を中国に隣接するカザフスタンに派遣し、カザフ政府に「中国とつき合うのをやめて米国と仲良くしよう」と持ちかけたり、中国で弾圧の対象にされているイスラム教徒の聖職者集団と会談して「米国は中国と違って信教の自由を尊重するよ」と表明したりして、中国に対する「嫌がらせ外交」を展開した。ポンペオはその後、最近中国との経済関係を拡大している東欧やウクライナにも行って「中国とつき合うな」と言っている。 (Secretary of State Mike Pompeo Warns Kazakhstan of China's Influence) (Pompeo: China does not benefit Ukrainian people)
フィリピンのドゥテルテ大統領が2月中旬、米国との安保協定(VFA、駐留米軍に治外法権を付与)を破棄し、米国と縁切りしたのも、トランプ政権がミンダナオでの麻薬取り締まりを人権侵害だと攻撃してドゥテルテ側近のフィリピンの上院議員(Ronald Dela Rosa、元警察長官)の米入国を拒否したことが直接の理由であり、トランプがフィリピンを米国側から中国側に追いやったことになる。米比間のVFAが実際に失効するの半年後だが、米政府はフィリピン側に対して遺留工作をやろうとしていない。米国は、これまで米国にとって中国沖の「不沈空母」の一つだったフィリピンが中国の属国に転じるのを黙認・歓迎する「隠れ多極主義」の姿勢をとっている。 (Ending Philippines-US military pact will affect South China Sea disputes: analysts) (Duterte’s gambit: Why Americans should thank the hot-headed leader of the Philippines)
2月21日に開かれたミュンヘン安保会議では、米国の代表者たちが「(欧米にとって)中国が最大の脅威だ」と宣言している。米国はEU諸国に対して「中国ファーウェイの5G技術を使うな」とも言い続けている。また国防総省は「中国と戦うための新兵器の開発が必要だ」と表明している。トランプ政権は、中国敵視の姿勢を強めているが、その一方でアフガン撤兵など、中国が覇権拡大しやすいような動きを加速している。トランプがこのような姿勢をとるのは、中国を怒らせ、中国が米国に対抗する覇権拡大の試みを強めるよう仕向けるためだろう。 (The Door Is Open for the Crucial Trump-Putin-Xi Summit) (No Weapon Left Behind - The American Hybrid War On China)
中国は、いずれ新型ウイルスの巨大な危機から立ち直った後、以前より米国に配慮することなく、覇権拡大を進めることになる。ウイルス危機は習近平政権もしくは中国共産党の独裁体制を転覆するのでないかといった見方もあるが、それは間違いだ。今回のような巨大な危機は有事体制をもたらし、現職の権力者を優勢にする。習近平も安倍もいろいろ批判されているが、政権転覆にはならない。トランプも再選される。 (米民主党の自滅でトランプ再選へ)
▼ウイルス危機の犯人は軍産?、違うか?
米中関係の現状と今後を考える場合、重要なのは「米国(軍産)が、今回のウイルス危機を起こしたのかどうか」という点だ。中国政府のこれまでの説明どおり、ウイルスが野生のコウモリから他の野生の哺乳類に自然界で感染し、その哺乳類が武漢の野生動物市場で売られる過程でヒトに感染し、ヒトからヒトに感染拡大していった、という話が事実なら、ウイルス問題は米中関係と直接に関係ない。中国が困っているのを見て、トランプ政権がちょうどいい機会だと考えて中国に嫌がらせ外交を展開し、中国を怒らせているという話になる。この場合、トランプはたまたま発生したウイルス危機を奇貨として中国に嫌がらせし続けている。 (武漢コロナウイルスの周辺)
ウイルスが、武漢のウイルス研究所などの実験室からの漏洩だったとしても、その漏洩の過程で軍産(米諜報界)が全く関与しておらず、中国側だけの研究所の職員の過失でウイルスが漏洩した場合も同様だ。しかし、同じ研究室からの漏洩でも、米諜報界のスパイにさせられてしまった研究者(中国の研究者の多くは米国への留学経験があり、そこでCIAなどに脅されたりほだされたりしてスパイになる可能性がある)が研究所内にいて、その者が何らかの方法で動物実験中のウイルスの漏洩を引き起こした場合は、軍産が今回の巨大なウイルス危機の犯人になる。中国共産党の上層部が、今回の危機を米国に引き起こされたことを把握しているなら、これは米中のある種の戦争になる。 (悲観論が正しい武漢ウイルス危機の今後)
こうした推論は根拠がないので「陰謀論」と罵られても仕方がない。今回のウイルスは、感染力はものすごいが発症時の重篤性が意外と低い。中共が劇的な大規模封鎖策をとった理由は、ウイルスの感染力がすごかったからであり、米国からの攻撃だったからでない、と考えることもできる。しかし、今回のウイルス危機はタイミング的に、世界の覇権が米国から中国に移りつつある時に発生している。先の2度の世界大戦がそうだったように、覇権の移転時には、覇権移転を推進しようとする側と阻止しようとする側の暗闘が高じて、大規模な戦争・世界大戦が誘発されやすい。今は米国と中露の両方が多数の核兵器を持っており、世界大戦をやれない。それで、世界大戦の代わりに今回のウイルス攻撃を、軍産が中国に仕掛けたのでないか、といった歴史的な推論が成り立つ。
今回のウイルス危機は、中国を痛めつけるだけでなく、世界の実体経済を大不況に陥れる。米日欧の中銀群がいくらQEで資金注入しても、一昨日から起きているような株価の世界的な暴落が止められなくなる。米国中心の巨大な金融バブルが、前倒しで崩壊していく。崩壊は、米国覇権を金融面から消失させていく。中国経済も破綻するが、中国はまだ新興市場であり、実体経済の成長余力がある。金融バブルを意図的に潰す策も、習近平の就任時からやっている。ウイルス危機は、米覇権を崩壊させる。
軍産の目標は、米覇権の維持である。軍産が中国でのウイルス漏洩を誘発したのなら、ウイルスは米国のバブルと覇権の崩壊を引き起こすので、米覇権の維持という軍産の目標に反している。軍産犯人説は、やはり間違いか?。いやいやそうでない。911以降の軍産の内部には、軍産っぽいことを過激にやって失敗・覇権消失につなげてしまう「軍産のふりをした反軍産」のネオコンがいる。トランプも覇権放棄のやり方としてネオコン戦略を採っている。今のネオコンは、具体的な人物・勢力を指すのでなく、ネオコン的な近視眼的な過激策をわざとやる勢力全体を指している。イラク戦争以来、米国の軍産は、ネオコンというウイルスに感染してゾンビ化している。 (好戦策のふりした覇権放棄戦略)
武漢で研究所からのウイルス漏洩を引き起こしたのがネオコン的な軍産・米諜報界であるなら、中国を痛めつけるだけでなく、最終的に世界的な金融崩壊を引き起こして米国覇権を消失させることを十分に把握した上で、巨大なウイルス危機を引き起こすことが十分にあり得る。ネオコンっぽいシナリオは、いずれ犯人が米国側であることがわかるように仕組まれていたりする。イラクの大量破壊兵器、イランの核兵器開発疑惑やスレイマニ殺害、シリアの化学兵器使用をめぐるOPCWのインチキ報告書などが先例だ。今回のウイルス危機がどうなるか注目だ。 (イランを強化するトランプのスレイマニ殺害)
▼日本政府の無策の原因は米国の覇権放棄
米国の覇権放棄は、今回のウイルス危機に対する日本政府の対応にも表出している。戦後の日本は国家の「安全保障」に関する重要な政策や意思決定をすべて「お上」である米国に委ねる強度な対米従属策をとってきた。だが冷戦後、米国は日本(などあらゆる同盟諸国)に頼られることを嫌う傾向を強め、トランプ政権になってからそれが加速した。そんな中で、世界各国の安全保障の重大事である今回のウイルス危機が起きた。この危機が、以前の対米従属の体制下で起きていたら、米政府が日本のウイルス対策の基本方針も裏で作ってくれて、日本の政府や官僚はそれに沿って動くだけの「小役人」で十分だった。横浜のクルーズ船は米国の船会社なのだから、米政府が指揮して対策してくれたはずだ。 (対米従属と冷戦構造が崩れる日本周辺)
しかし、今のトランプの米政府は同盟諸国に非常に冷淡に接する覇権放棄策を採っているので、日本に対して何も指導せず、クルーズ船の対策でも船会社が米国なのに動かず、日本政府のやり方が全くダメだとわかってから、批判したり、米国人を帰国させたりする他人行儀な策に終始した。国家安全の重大事に際し、米国(お上)が主導してくれることで政府内の結束を作る仕掛けになっていた日本では、米国が何もしてくれないので、無策なだけでなく政府内の結束すらとれず、ウイルス対策は見事に失敗し続けている。日本政府が動かないので、ウイルスへの具体的な対策の多くは都道府県に丸投げされている。クルーズ船から下船した感染者の搬送先や搬送手段を手配したのは、日本政府でなく神奈川県だった。 (政府のクルーズ船対応に神奈川県知事が苦言「国が仕切るのが筋」) (まだ続き危険が増す日本の対米従属)
有事の際に権力者の指導力への依存が強まるのはどこの国でも同じだが、日本の最高権力者(お上)は米国政府なので、今回のような有事に米国が動いてくれないと、日本政府は指導者不在のまま、完全な機能不全に陥ってしまう。安倍など歴代の首相は、日本の指導者でなく、米国の下につく「中間管理職=小役人」である。小役人国家である日本の特徴が露呈したのが今回の危機だ。 (Japan, U.S. hail security pact which Trump branded unfair)
今回のことを教訓に、もう米国は日本の指導役(お上)でないのだ、ということに日本の上層部が気づき、米国に頼らず日本国内で完結する権力構造や危機管理体制を作ることが必要だ。しかしまだ日本では上層部から国民までの多くが、米国の覇権喪失や、対米従属策の不能性に気づいていない。早く気づけば、これから改善していける。だが今のように、人々が「日本政府はダメだ」というばかりでなぜダメなのか考えない状態が続くと、日本は失敗を繰り返すばかりで改善できず、国や社会の力が浪費されていく。中国との国力逆転がひどくなり、アジアの地域覇権国である中国の属国になっていく。安倍が習近平の訪日を強く実現したがっているのは、その流れだ。 (Risks to the Japan-China 'Tactical Detente')

田中宇の国際ニュース解説
http://tanakanews.com/200311virus.htm







新型ウイルス関連の分析
2020年2月20日   
田中宇
ロシア政府が新型コロナウイルス(covid19)の感染拡大をおそれ、2月20日から、すべての中国人の入国を禁止し始めた。すべての中国人の入国を完全に禁止したのは世界で初めてだ。中国敵視のトランプの米国でさえ、米国人の中国渡航は禁じたが、中国人の入国は禁じていない(14日間の検疫が必要)。ロシアは中国、プーチンと習近平は強い盟友の関係だったのに、今回のロシアの中国人入国禁止で露中関係が悪化するのでないかと指摘されている。それに、なぜ今のタイミングで入国禁止なのか。 (Coronavirus Deaths Soar Past 2,000 As Hubei Reports Jump In Daily Casualties)
ロシアが今のタイミングで中国人の入国を全面禁止したのは、経済の再開を重視する中国政府がこれから従来の厳しい国内諸都市の封鎖を少しずつ解いていくからだ。封鎖解除とともに、中国国内の人的の交通がしだいに増えていく。同時に、中国国内の閉鎖で激減していたロシア(や日韓など周辺諸国)にやってくる中国人も少しずつ再増加する。中国政府が、新型ウイルスの感染問題を完全に解決できたので国内の封鎖を解除していくなら良いが、実際はそうでなく、これ以上経済の再開が遅れると、習近平の独裁と、中国共産党の統治の正統性が失われかねないので無理をして封鎖解除・経済再開を進めている。
中国のウイルス問題はまだ解決していない。経済再開の途中で中国の発症者が再増加するおそれがある。中共の機関紙である人民日報がそう書いている。今後、中国からロシア(や日韓)に渡航が増加する人々の中には、ウイルス感染して未発症・未発熱な人が含まれている。その手の人々を国境や空港で察知することは不可能だ。新規入国の中国人の一定割合が、ロシアに入国してから発症し、もしくは未発症なまま、ロシア国内で感染を広げる。ロシアはこれまで発症者を出さないできた。ロシア政府の発表では感染者(発症者)が2人しかいない(発表が事実かどうか不明だが、それは日本も同じだ)。ロシア政府は、中国人の入国が再増加する前にとりあえず全面禁止にしたのだろう。プーチンのロシアはこのような中国の事情を把握し、それを理由に入国禁止を挙行したので、習近平の中共はロシアに公式な抗議をしていないし、おそらく非公式にも抗議していない。ロシアの事情も理解できるからだ。中露関係は今後も良好だろう。
(ロシアに入国した中国人の中には、極東地域などで物資や不動産の買い占めなどをやって荒稼ぎしている者が多く、そうした中国商人がロシアで嫌われている。彼らをもう入国させないという意図もありそうだ)
ロシアは賢明にも中国人を入国禁止にしたが、日本や韓国は依然として何もしていない。日韓は、中国人を入国禁止にしたら習近平に激怒されて陰湿に制裁されるのか??。中国から見て、ロシアは自国と対等な地域覇権国(国連P5)だが、日韓は「中国の属国」なので入国禁止は許さないとか??。そんなことはないだろう(多分)。日韓がロシアの真似をして中国人を入国禁止にしても、中国は本格的に怒らない。表向き不快感を表明する程度だ。ならば、日韓も中国人を今すぐ入国禁止にするのが良い。
日本や韓国は、すでに国内感染が広がっているからいまさら中国人の入国を拒否しても無意味なのか??。それも違う。新型ウイルスは、感染を重ねるほど発症時の重篤性(致死率、病原性)が弱まる。日韓での国内感染の多くは、すでにいくつもの感染を重ねてきた高次の感染ウイルスで、重篤性が弱い。だが中国から新たに入国してくる人々が保有するウイルスの中にはもっと低次で発症時の重篤性が高いものがより多く含まれている。中国はウイルス発祥地の武漢を抱えているのだから、そう考えるのが自然だ。中国人の入国禁止は、今からこそやるべきだ。ロシアを見ると、それが感じられる。ロシアに学ぶべきだ。しかし、日本も韓国も「小役人体質」なので多分そんなことはしない。多くの人がずっと前から、中国人の入国を止めるべきだと日本政府に進言しているのに無視されている。残念だ。 (世界に蔓延する武漢ウイルス(2))
▼無理して経済再開を進める中共
中共は2月17日の週明け以降、しだいに経済の再開を優先し、封鎖対象地域を縮小している。封鎖対象の人口は4億人から1億5千万人に減った。要人やエリートが多く住む首都の北京は外部からの人の流入を止めている。ウイルス発祥地の武漢や湖北省は閉鎖をより厳重にして、ウイルスの漏洩を止めようとしている。最上位の北京と、最下位の湖北を閉鎖した上で、残りの中国での封鎖を少しずつ解き、経済活動を再開しようとしている。 (China Claims 95% Of SOEs Have Restarted Production. There's Just One Problem...)
新型ウイルスはまだ不明な部分が多いので、これから感染・発症の再拡大がありうる。それで中国経済の再開が頓挫すると、中共と習近平の政治正統性に対する信用問題になりかねない。経済再開は、世界資本家たちから中共への強い要望(命令?)でもある。中共は無理をして経済再開を試みている。綱渡り状態だ。 (世界資本家とコラボする習近平の中国)
▼クラスター数の増加幅で決まる
日本と韓国の新型ウイルス発症者(確認された感染者数)が増えているが、その深刻さを考える場合、発症者の人数よりも、クラスター(一人の発症者から感染が拡大した感染者集団)の数が重要だ。既存のクラスター内の感染者数がどんどん増えても、クラスターの総数があまり増えなければ、市中感染(発症するほど強い感染)の拡大がそれほど深刻でない。クラスター内の感染・発症はいずれ止まる。だが、クラスターの増加が加速すると、それぞれのクラスター内での感染・発症が重なり、発症者数の増加幅が大きくなり、事態が深刻になる。
これまでは日本も韓国も、クラスター数がどんどん増える感じはなかった。しかし、今後はわからない。これから2週間ぐらい経ってもクラスター数が急増しなければ、国内に入ってきている新型ウイルスのほとんどは重篤性の弱いものだった可能性が大きくなるが、そうでない場合は困ったことになる。

田中宇の国際ニュース解説
http://tanakanews.com/200311virus.htm






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