2020年02月08日

In Deep Oka: 40年前のアメリカの小説『闇の眼』に出てきた史上最強の生物兵器「武漢 -400(Wuhan-400)」



In Deep Oka: 40年前のアメリカの小説『闇の眼』に出てきた史上最強の創造上の生物兵器は中国武漢の研究室で作られた。その兵器の名前は「武漢 - 400(Wuhan-400)」
『闇の眼』より、英文をそのまま日本語に翻訳
「ちょうど、そのころ、リ・チェンという中国の科学者が合衆国に亡命してきたんです。この十年の間の中国で一番重要で危険な細菌兵器のマイクロフィルムのファイルを持って。中国側はこれを”武漢-400”と呼んでいます。開発されたところが武漢市の近郊の RNA と DNA の実験室だったものですから、そう名づけられました。これはその武漢の研究室で作られた400番目の人工微生物の生存種なのです。武漢-400は完ぺきな兵器です。感染するのは人間だけ。他の生物はキャリアになれません。梅毒と同じで武漢-400も人体の外では一分以上生存できません。ということは、炭疽菌や他の有毒なバクテリアのように物や場所を永久に汚染することはできないのです。保菌者が死ぬと、体内にいた武漢-400も体温が三十度以下になるや、すぐ消滅してしまいます。こういう兵器の利点がおわかりでしょうか?」

In Deep
https://indeep.jp/in-1981-powerful-biological-weapon-wuhan-400-is-born



40年前のアメリカの小説『闇の眼』に出てきた史上最強の創造上の生物兵器は中国武漢の研究室で作られた。その兵器の名前は「武漢 - 400」
投稿日:2020年2月6日
更新日:2020年2月7日
「武漢-400」という名称の生物兵器が出てくる小説『闇の眼』英語版より
・The Eyes of Darkness
■米人気作家が創り出した創造上の武漢ウイルス
数日前に、海外のメディアや SNS で、何となく興味をそそる話を見かけました。
たとえば、下はフランスのメディアの記事です。
「武漢-400」 1981年のアメリカ人作家の奇妙な予測
Coronavirus : le "Wuhan-400", l'étrange prédiction d'un auteur américain en 1981
gentside.com 2020/02/05
アメリカの作家ディーン・クーンツは、彼の小説『闇の眼』で、武漢 400と呼ばれる創作上の生物兵器を登場させるという不穏な偶然を 1981年に生み出していた。ホラーとサスペンス小説で名高いクーンツは、「ファントム」や「ファンハウス」のような多くのベストセラーを発表しているアメリカの人気作家だ。そのクーンツの著作『闇の眼』には、いくつかの要素が、中国の武漢で発生した新型コロナウイルスと不穏な類似点を生み出している。しかし、その小説が書かれたのは、今から 40年近く前の 1981年なのだ。
クーンツは、中国の武漢にある実験室で開発された非常に強力な生物兵器を「武漢-400」とし、そして、登場人物に、これは完璧な武器だとして次のように述べさせている。
「武漢-400は完璧な兵器です。感染するのは人間だけ。他の生物はキャリアになれません。梅毒と同じで武漢-400も人体の外では一分以上生存できません」
そして、『闇の眼』で説明されている症状は、新型コロナウイルスの症状に奇妙に似ている。小説には以下のように書かれている。彼はまた武漢-400の最初の症状のいくつかを経験し始めていた。それは、めまいと軽度の吐き気などだ。武漢-400は強い伝染性を持ち、多くの人々を一掃する能力を持つ。
「中国は武漢-400を使って都市や国を破壊することが可能で、しかも、その後に繊細で高価な除染を行う必要がないのです」
そして、武漢-400の病毒性について以下のように説明している。
「ウイルスに接触してからわずか4時間で感染性キャリアになります。非常に短い潜伏期間です。一度感染すると、24時間以上生きることはできません。ほとんどは12時間以内に死亡します。武漢-400の死亡率は100%です。誰も生き残ることはできないのです」
幸いなことに、これは現在流行している新型コロナウイルスとの特徴とは合わないが、40年前に物騒な予測をしたアメリカ人作家がいたものだと驚く声が多い。このようなものなのですが、同じ内容の投稿を SNS などでもかなり見かけました。それだけ、このクーンツという作家がよく知られているということなのかもしれません。冒頭の画像は粗いですので、判別しにくいですが、「 Wuhan - 400 」、つまり「武漢 - 400」という文字は捉えることができます。
さて、そして実は、私が強烈に面白い事実と遭遇し始めるのはここからなのです。このように、生物兵器に「武漢」という名称がつけられているのは偶然の一致でしかないでしょうが、このような記事や SNS を読みまして、なんとなく興味を持ったのです。私はアメリカ人作家をほとんど知らないですので、このクーンツという人も知らなかったのですが、ちょっと調べてみますと、アメリカではスティーブン・キングと並び称されるほどの人気作家だそうで、そして、この『 The Eyes of Darkness 』という作品は、『闇の眼』というタイトルで日本語で出版されていることを知りました。アマゾンで、この『闇の眼』という小説を購入したのです。そして、本日その『闇の眼』が到着しました。結構長い小説ですので、まだ最初からはちゃんと読んでいないのですが、とにかく、先ほどの英文の「該当部分」を探す作業をしていました。
ところが・・・。
「日本語翻訳版には、その部分がない」
のです。正確に書きますと、そこに該当するだろうなという部分は見つかったのですが・・・。私は小説の翻訳の世界を知らないとはいえ、「こんなことをするもんなんだ」と驚いた次第です。
どういうことかといいますと、先ほどのフランスのメディア記事では、オリジナルの英語版では「中国が開発した武漢-400という生物兵器」とあります。ちなみに、ネット上で、ポーランド語版の『闇の眼』を見かけたのですが、そちらも「武漢-400 ( Wuhan-400 )」となっていました。ポーランド語版『闇の眼』より
・nczas.com
では、日本語翻訳版ではどのようになっているのかをご紹介しましょう。なんと、中国が「ソ連」と置き換えられて、武漢が「ゴーリキー」と置き換えられているのです。日本語版『闇の眼』から、先ほどのフランスの記事で抜粋されていた部分をご紹介します。会話の部分です。
日本語版『闇の眼』より
「ちょうど、そのころ、イリヤ・ポパロボブというソ連の科学者が合衆国に亡命してきたんです。この十年間ソ連で一番重要で危険な細菌兵器のマイクロフィルムのファイルを持って。ロシア人はこれを『ゴーリキー四百』と呼んでいます。
開発されたところがゴーリキー市の近郊の RNA と DNA の実験室だったものですから。これはその研究室で作られた四百番目の人工微生物の生存種なのです。ゴーリキー四百は完ぺきな兵器です。感染するのは人間だけ。他の生物はキャリアになれません。梅毒と同じでゴーリキー四百も人体の外では一分以上生存できません。ということは、炭疽菌や他の有毒なバクテリアのように物や場所を永久に汚染することはできないのです。保菌者が死ぬと、体内にいたゴーリキー四百も体温が三十度以下になるや、すぐ消滅してしまいます。こういう兵器の利点がおわかりでしょうか?」
このようになっているのです。
その後、英文のオリジナルの小説と照らし合わせてみたのですが、上の部分の
> イリヤ・ポパロボブというソ連の科学者
は、英語版のオリジナルでは、
「 Chinese scientist named Li Chen 」
となっていて、つまり「中国のリ・チェンという名前の科学者」がオリジナルで、
> ロシア人はこれを”ゴーリキー四百”と呼んでいます。
の部分は、日本語で書けば、「中国ではこれを”武漢-400”と呼んでいます」が、オリジナルなのです。国を中国からソ連に変えてしまっているわけです。照らし合わせているうちに、さすがに苦笑しまして、「こんな変え方を原作者は許したのかなあ」と思った次第でもあります。
原作に忠実に訳しますと、先ほどの部分は以下のようになります。
『闇の眼』より、英文をそのまま日本語に翻訳
「ちょうど、そのころ、リ・チェンという中国の科学者が合衆国に亡命してきたんです。この十年の間の中国で一番重要で危険な細菌兵器のマイクロフィルムのファイルを持って。中国側はこれを”武漢-400”と呼んでいます。開発されたところが武漢市の近郊の RNA と DNA の実験室だったものですから、そう名づけられました。これはその武漢の研究室で作られた400番目の人工微生物の生存種なのです。武漢-400は完ぺきな兵器です。感染するのは人間だけ。他の生物はキャリアになれません。梅毒と同じで武漢-400も人体の外では一分以上生存できません。ということは、炭疽菌や他の有毒なバクテリアのように物や場所を永久に汚染することはできないのです。保菌者が死ぬと、体内にいた武漢-400も体温が三十度以下になるや、すぐ消滅してしまいます。こういう兵器の利点がおわかりでしょうか?」
まあ・・・すごい変更の仕方ですが、出版社側の事情もわからなくもないです。1981年は、冷戦の時代ですし、アメリカと生物兵器で対峙するのはソ連のほうが伝わりやすいだろうというのが編集側の意図だったのでしょうかね。しかし、原作には「中国」とあり、つまり、「イリヤ・ポパロボブというソ連の科学者」は原作には出てこないわけでして、さらには、「ロシア人はこれを『ゴーリキー四百』と呼んでいます」という文章もオリジナルにないのです。「この変え方はすごい」と、苦笑が止まらない感じでしたが、翻訳小説には、こういうことがよくあるのでしょうかね。この小説の日本語翻訳に際して、「中国」を「ソ連」と変更した理由をネットで調べてみましたけれど、それにふれているようなものはありませんでした。
それにしても、原作通りに「武漢 - 400」という生物兵器が出ている小説にしておけば、「 40年前に不気味に予告されていた細菌戦」とかいうキャッチフレーズで、またこの本を売り出せたかもしれないですのに。ゴーリキー400ではねえ(苦笑)。
なお、日本語版でのゴーリキー400、つまり、オリジナルでの「武漢 - 400」の特徴は、以下のように述べられています。せっかくですし、オリジナルの「武漢 - 400」に置き換えて、抜粋します。ロシア人という単語も、オリジナルの中国人に置き換えます。「武漢 - 400にはほとんどの細菌兵器を上回る重要な利点が他にもいくつかあるんです。まず、ウイルスに感染してからわずか四時間後にはもう、他人にうつせるキャリアになっている。これは驚くほど短い潜伏期間です。一度感染すると、二十四時間以上は生存できない。十二時間で死亡するというケースも多い。殺人率は百パーセントです。だれも生きのびることができない。中国人たちは、いったいどのくらいの数の政治犯に試してみたことか。彼らはこれに対して有効な抗体も抗生物質も発見することができませんでした」
お読みになって、おわかりのように、小説に出て来るこのウイルスは、似ているのは名称だけで、新型コロナウイルスとは似ても似つかぬ特徴を持ちますが、特に似ていないのが、
> 人体の外では一分以上生存できません。
という部分です。
武漢の新型ウイルスは、ドアノブなどからも見つかっているように、外でも最大 5日間は生き延びることが中国人科学者によって確認されています。小説の「武漢 - 400」が、なぜこのように「人体の外ではすぐ死滅する」ように設計されたかというと、主人公の次の台詞でわかります。僕の理解したところでは、ロシア人は町なり国なりを武漢 -400で一掃しても、征服した領土に引き移るにあたって、手の込んだ金のかかる病原体の浄化作業をする必要がない。つまり、攻撃をする敵地の人々をこの兵器で一掃した後、環境の中でウイルスが死滅しないでそこに存在し続ければ、そこに踏み込んだ味方もウイルスに感染してしまう。ですので、人体から離れたウイルスは、速やかに死滅するタイプのものでなければ、戦略には使えないということだと理解します。細菌攻撃後に、すぐ自国の兵士がそこを占拠しても、自国兵士には被害はないということになるということです。ただ、先ほどの小説のくだりにありますように。
> 彼らはこれに対して有効な抗体も抗生物質も発見することができませんでした
ということで、これでは結局、使い物にならないです。つまり、感染している人がいる限り、誰も近づけないものとなるわけで、これでは兵器としては失敗ということになりそうです。
それにしても、アメリカ人作家のディーン・クーンツさんが、なぜ兵器の名称に「武漢」とつけたのかは興味のあるところです。1980年代当時のアメリカ人は、ほとんど武漢という町のことなど知らないでしょうし、一般のアメリカ人読者に訴えるのなら、中国の他の都市の名前のほうが良かったのではないかという気もします。そして、偶然だとしても、その 40年後に、まさにその武漢から現代史上最も懸念されるウイルスが発生したというのは、人気作家ならではの予測力ということになるのでしょうかね。偶然とはいえ、興味深いところです。
ところで、この『闇の眼』の先ほどのあたりを読んでいますと、英国のコメディ集団であるモンティ・パイソンの一員で、後にアメリカで映画監督となるテリー・ギリアムさんの 1995年の「12モンキーズ」という作品を思い出します。ブルース・ウィリスさんとブラッド・ピットさんが出演しているメジャー映画ですが、この映画は「人類の 99%がウイルスで死滅した後の世界」から始まり、そして、そのウイルスが過去にばらまかれた時点までタイムマシンで戻り、それを阻止しようとする男性の話でした。試みは失敗してしまいますが。近は「 99%除菌」というような製品も多いですが、この映画では、人類のほうが 99%除人されてしまうのです。ちなみに、この「12モンキーズ」には、原作となっている映画があるということをメルマガの読者様から教えていただき、それは、1962年の「ラ・ジュテ」という 29分間のフランスの短編映画でした。探してみましたら、パラビという動画配信サイトにありました。見てみますと、 何とこの映画は、フィルムではなく、「写真をつなぎ合わせて映画作品を作っている」というものすごい野心作でした。「世界の滅亡後」を描いているもので、そして、やはり過去や未来と接触しようと試みる話なのですけれど、見た目などが、いかにもテリー・ギリアムさんが好きそうな世界でした。今の時代には絶対に出てこないタイプの映画です。
フランス映画『ラ・ジュテ』(1962年)より
・La Jetée
話がそれましたけれど、偶然知った 40年前のアメリカの小説『闇の眼』に「武漢 - 400」という生物兵器が出てくることも興味深かったですし、何より、翻訳小説というものは「時勢に合わせて、どんどん内容を変えちゃうのだなあ」ということも知りまして、表現の世界もいろいろだなと知った次第です。冷戦下だったので、中国をソ連と変えてしまうという。
そういえば、最近、以下の記事で、ウイルスに対しての人間の「免疫」のメカニズムを少し書かせていただきました。こういう「免疫のメカニズムを操作するような研究もこの世にはあるのだろうな」というようなことを書いたのですけれど、「すでにあった」のでした。それは日本人科学者の方によるものでした。
2014年の報道を人から教えていいただきました。
以下は当時の AFP の報道です。
ここに、
> ヒトの免疫系を回避できる変異株の開発に成功した
と書かれています。
強力なH1N1インフル変異株、邦人研究者が開発
AFP 2014/07/03
米国に拠点を置く日本人研究者が、H1N1型インフルエンザ(豚インフルエンザ)ウイルスを改変し、ヒトの免疫系を回避できる変異株の開発に成功したことを明らかにした。同研究を行っていたのは、米ウィスコンシン大学のウイルス学者、河岡義裕教授。研究結果は論文としてはまだ発表されていないが、英紙インディペンデントがこの研究について報じている。河岡教授の研究について同紙は、危険なインフルエンザウイルスの作製を目的とする「議論を呼ぶもの」と断じ、「研究を知る一部の科学者らは恐怖を感じている」と指摘している。河岡教授はAFPへ宛てた電子メールで、「適切な管理下に置かれた研究室で、免疫を回避するウイルスを選別することにより、2009年に流行したH1N1ウイルスが免疫系を回避することを可能にする重要な領域を特定することができた」と説明した。一方で、インディペンデント紙の報道については「扇情的」と批判。研究の目的が、自然界でウイルスがどのように変異するかを調べ、より優れたワクチンの開発につなげることにあると反論した。また世界保健機関(WHO)にも研究について報告を行っており、好意的な反応が得られていると主張した。人間の免疫系を回避するウイルスは、作ろうと思えば作ることができるのだということを知りました。
ということは、他の研究機関でも(あくまで学術研究として)すでに行われている可能性のほうが高いということになるのかもしれないですね。小説『闇の眼』の世界は、そんなに非現実的でもないと知りました。ちなみに、小説はまだ少しだけしか読んでいないですが、この武漢-400は、パンドラ計画という作戦遂行と関係があるようです。

In Deep
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Robert A. Heinlein「夏への扉」(1979)〜夏への扉を探すネコと30年後のボク

Robert A. Heinlein「夏への扉」(1979)〜夏への扉を探すネコと30年後のボク
Robert A. Heinlein「夏への扉」
僕が飼っている猫のピートは冬になると決まって夏への扉を探し始める。家にたくさんあるドアのどれかが夏に通じていると信じているのである。
1970年12月3日,この僕もまた夏への扉を探していた。。最愛の恋人に裏切られて,仕事が取り上げられて,生命から二番目に大切な発明さえ騙し取られてしまった僕の心は12月の空同様に凍てついていたのだ。。
そんな僕の心を冷凍睡眠保険が捕らえたのだが。。
ーRobert A. Heinlein, 夏への扉, ハヤカワ文庫SF, 1979年初版,

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6週間戦争の始まる少し前の冬,僕と僕のオス猫・護衛官ペトロニウスとはコネチカット州のある古ぼけた農家に住んでいた。
マンハッタンの被爆地帯の西の端にあったし,古い木造家屋というものはティッシュペーパーに火をつけたようによく燃えるから,今でもまだあの農家があそこに建っているかどうか疑問だ。
おそらくはないだろう。。そしてもし建っていたとしても,放射能の死の灰が降った後では高い家賃で貸すわけにはいかないだろう。
しかし当時僕らはーつまりぼくとねこのピートはこの家を気に入っていた。 下水がなかったので家賃は安かったし,居間だった部屋に置いた僕の製図机に冬の日差しがよく当たった。
しかし欠点があった。この家は何と外に通じるドアが11もあったのである。ピートのドアも勘定に入れれば12個のドアがあるのである。
僕はいつも猫のピートに専用のドアを開けて待ってやることにしていた。
この家の場合には,使わない寝室の窓に打ち付けた板切れでそこにちょうどピートのひげの幅に「猫越」を切ったのである。なぜこんな面倒をしたかといえば,今日まで僕はあまりに多くの時間を猫のためにドアを開けたり閉めたりすることを消費しすぎていたからである。。
僕が一度計算したところによると,文明の夜明けからこのかた,人類は972世紀分の時間を猫に費やしてきているのである。なんならもっと詳しい数字を見せてもいい。
私の猫ピートは,人間用のドアを開けろとせがむ場合には遠慮なく僕の手をわずらわせたが,それ以外は普通自分用のドアを使った。しかし地上に雪が積もってる間は絶対に自分のドアを使おうとはしなかった。
綿の化物のような子猫時代からピートは極めて単純明快な哲学を編み出していた。
家と食事と天気の世話は僕に任せて,それ以外の一切は自分持ちという哲学である。
しかしその中でも天気が特に僕の責任であった。
Connecticutの冬が素晴らしいのはもっぱらクリスマスカードの絵の中だけである。
その冬が来るとピートは決まっていまず自分用のドアを試して,ドアの向こうに不愉快な白いものを見つけるともう外には出ようとせずに人間用のドアを開けろと始終僕にうるさくまとわりつく。ピートはその人間用のドアの少なくともどれかの一つが夏に通じているという固い信念を持っていたのである。。
これは彼がこの欲求を起こす都度,家の11箇所のドアを一つずつ彼について回って彼が納得するまでドアを開けて,さらに次のドアを開けるという巡礼の旅を続けなければならないことを意味する。
そして一つ失望の重なるごとに,彼は僕の天気管理の不手際さに不快そうに喉を鳴らすのであった。
こうして見極めがつくとピートはそれっきり家の中に閉じこもって,生理的欲求がギリギリの線に来るまでは絶対外に出ようとしない。
外へ出て帰ってくると四つの足は雪で凍り付いていた。板敷の床の上に木靴でも履いてるような音を立てる。そして僕を睨みつけてその氷を残らず舐めてしまわないうちは僕がどんなに機嫌を取ろうとしても喉など鳴らさない。。
しかしピートはどんなにこれを繰り返しても夏への扉を探すのを決して諦めようとしなかった。
そして1970年12月3日。かくいう僕も夏への扉を探していた。。僕の場合のそれもコネチカットの1月にピートが夏を求めたのと引けを取らない儚い望みであった。。
冬が僕の心にあったのである。僕は健康を害してもいない。歳も30のこちら側であって,一文なしの貧乏人でもなかった。警察に追われる身でもないし,人妻を寝取ってその夫につけまわされているわけでもない。税金徴収人から逃げていたわけでもない。記憶喪失にかかってるわけでもない。
にも関わらず僕の胸には冬が住んでいた。僕はひたすら 夏への扉修 求めていたのである。
ーRobert A. Heinlein, 夏への扉, ハヤカワ文庫SF,

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〜2001年3月5日日曜日。冷凍睡眠から目覚めた僕は文化女中器(女中ロボット)の婦人科の事務所に出かけた。技術部門とは何ら関係のない事務系統の臨時の求人しかなかったので,仕方なく求職者の列に入った。しかし面倒な書類を1ダースも書かされた挙げ句に「追って通知します」という例の挨拶をされてみんな追い返されてしまった。
僕は係員の後を追いかけ回して,とうとう求人課の課長代理に会うことができた。
彼は面倒くさそうに書類をめくっていたが,やがて「30年も仕事にブランクがあったのでは技術者としての前歴も何の意味もないですな」
と言った。
僕は冷凍睡眠者であることを彼に念を押した。
「なお悪いね。いずれにしてもウチでは45歳以上の人を雇わない方針なんだ」
「だって僕は45じゃないですよ!まだ30になったばかりです」
「1940年生まれではどうしようもない。お気の毒ですが駄目ですな」
「それでは僕はどうすればいいんです?」
と言うと彼は肩をすくめて
「私なら養老年金を申請するね」
僕は急いで事務所を飛び出した。そして3/4マイル歩いて本社の建物の玄関から上がり込んだ。総支配人の名前はカーチスであった。僕は面会を申し込んだ。
僕は前から待っていた弁護人2人を飛ばして進んだ。女中ロボット製作会社のくせに受付嬢はロボットではなく生身の綺麗な人間の女の子である。僕は何十階かでエレベーターを降りた。〜
ーRobert A. Heinlein, 夏への扉, ハヤカワ文庫SF,

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