2020年01月04日

A.E.Van Vogt: 非Aの世界〜「ゲーム機械」が司る社会

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A.E.Van Vogt: 非Aの世界〜「ゲーム機械」が司る社会
時は2650年。宇宙はいくつもの帝国から構成されて「銀河系連盟」が結成されている。
地球には「ゲーム機械」があってそれが司るゲームに合格した人が政府の要職についている。あるいは金星行きの資格を獲得する。
「非A(ナルA)人」 Gilbert Gothen( ギルバート・ゴッセン)はこのゲームに参加すべく機械市にやってくるが,彼の記憶は全てチグハグである。この間違った記憶は 誰に植え付けられたか?そもそも彼自身は誰なのだろうか?
自分の素性をつきとめようとする彼の探索はいつのまにか銀河系規模の陰謀の最中に彼を巻き込み多くの奇想天外な冒険に突入することになる。
ー非Aの世界, A.E.Van Vogt,創元推理文庫,1966,

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Gothenは回れ右をして機械の基部の周りを大股で歩いて都会の中心部へと向かった。
近くの小さいレストランで昼食をとって,それから電話帳の黄色いページをめくり始めた。自分の探している名前は彼を知っていて,ほとんど即時にその名前を見つけた。
David Rester Enlight 精神科医
医術ビル709号室
Enlightはゲームで10日目より先まで勝ち残りたいという人のための必読書を何冊か書いていた。この男の著作の水晶のような 明晰さ。使われているあらゆる多面的な単語に向けられた慎重なセマンティック的な考慮。そして知能の広がりと人間の心身全体に対する理解力ーそれは思い出すのも楽しいものであった。
Gothenは電話帳を閉じて街路に出た。気分がゆったりしている。神経も穏やかである。彼の心には希望が波打っていた。自分がEnlightの著作をこれほど詳しく覚えているということは,彼の記憶の上に被せられた健忘症がいかに軽いものであるかを示している。あの有名なEnlightに一度診てもらえればたちどころにわかるだろう。
診察室の受付係が言う。
「Enlight先生は時間を約束したな人だけを診察します。今日から 3日後なら 1時間診てさしあげられます。つまり木曜日の午後2時です。しかし内金として25ドルいただきます」
Gothenはその金額を払って領収書を受け取って外に出た。失望はしたもののそれほど激しくは失望しなかった。医者というものはまだ完璧な非Aを達成していない世界ではどうしてどうしても忙しい身になるだろう 。。
再び街路に出たGothenは今まで見たうちで最も長くもっとも強力な車が傍らを走りすぎて,ちょっと先の木陰の歩道の脇に止まるのを見守った。
車は午後の日差しを受けてテカテカ光っている。出てきたのはTeresa Clerk(テレサ・クラーク)。
濃い色の豪華な布地でできた アフタヌーンドレスを着ている。
Gothenは自分のすぐ横で立ち止まった男に訊いた。見知らぬ男はびっくりして彼を一瞥してそれからGothenがすでに憶測していた名前を言ったー「あれはPatricia Hardy。Hardy大統領の娘さんです。相当なノイローゼですね。あの車ごらんなさい。まるで超大型の宝石だ。明らかにあれはー」
Gothenは車とさっきまで車に乗っていた人から顔を背けて立ち去りかけた 。
Patriciaが他でもない今夜,見知らぬ男と2人きりになるために空き地に来るなどということはいかにも馬鹿げている。
ところが彼女はそこに来ていた。Gothenは影のような娘の姿を思案深げに凝視していた。彼女はこの落ち合わない場所に極めて巧妙にやってきたのだった。ほとんど真っ暗闇の中で彼はそのまま彼女を見守り続けた。10分もすると彼女は立ち上がって伸びをしてまた座り込んだ。今度は靴を脱いでGothenの方にごろりと転がって草の上に横になった。そして彼女はGothenを見た 。Gothenは娘を眺めた。
それからもの柔らかにしゃべりだした。自分の窮状の説明をしたのである。つまりホテルから追い出されたこと。記憶を隠していること。健忘症のこと。Patricia Hardyと結婚していたのだという妙な錯覚のこと。を話した。
「そしたらね」と彼は物悲しそうに話を結んだ。
「彼女は大統領の娘でちゃんと生きてるということはわかったんだ」
Hardyは言った。
「あなたが診てもらうことになっているような精神科の医者たちは皆ゲームに勝って金星行きの旅行をして,それから開業するために地球に帰ってきた人達なんだって言うけど,本当かしら?それ以外の人は精神科やそれに関連した仕事に携わることができないっていうのも本当?」
Gothenはまだこれを考えていたことがなかった。
「うんそうだよ。他の人は精神医学には訓練を受けることはできてもー」

ー非Aの世界, A.E.Van Vogt,創元推理文庫,1966,

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西田幾多郎氏の「絶対矛盾的自己同一」について 〜 我々の世界は、人々が未来を創造する“逆算の思考”抜きには成り立たない
2020/01/03 10:00 PM
哲学・宗教 / *生き方, 日本国内, 生き方, 竹下氏からの情報
竹下雅敏氏からの情報です。
西田幾多郎の絶対矛盾的自己同一を、とてもわかりやすく説明した文章です。記事の中で興味深いのは、我々の世界は、過去の出来事の総計として現在があるという見方です。現代人には馴染み深いもので、古典物理学はこの考え方に基づいて世界を解明しようとしています。しかし、我々が日常生活で行動する場合には、むしろそうではなく、未来の計画、あるいはヴィジョンに基づいて、この計画を実現するためには何が必要かを考える逆算の思考で、現在の行動を定めるのではないでしょうか。
要するに、創造的な生き方をしている人は、むしろこの逆算の思考を日常的に用いているはずなのです。
人間は小さな創造主です。未来を創造的に設計しようと思えば、このような逆算の思考は、必然のものであり、古典物理学の世界観の方が異常だと感じられるのではないでしょうか。事実はといえば、古典物理学の世界観と、この逆算の思考の両方から、世界は成り立っていると考えるのが自然だと思います。
(竹下雅敏)
注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
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絶対矛盾的自己同一
引用元)
西尾泰和のScrapbox 
(前略)
西田幾多郎の絶対矛盾的自己同一を読んで(中略)… 「[Aは非Aであって、それによってA]」ってのは何もおかしくなくて、まさにその通りのことを言ってるのだけど、ただものすごく圧縮表現されてるってだけのことなんだなぁと腑に落ちた。
(中略)
「Xでもnot Xでもなくて、その合体だ」ということを彼は言おうとしているのだけど、大部分の人にとっての素朴な世界観はXなんで混乱するのである。ちなみにこの素朴な世界観Xってのは「現在が過去によって決まる世界」「不変的原子のような[個物]が相互作用してる世界」だ。この世界観Xは、物理的にはしっくりくるものだと思うけど「でも人間が意図とか目的とか持って行動するのとうまく合わないよね」って言ってる。
それのアンチテーゼとしてのnot Xの世界観は何かって言うと「現在が未来から決まる」「未来にこうであるという目的から逆算で現在が決まっている」という世界観。
(中略)
そういう矛盾的なものが同一である、しかも自己と同一である、というわけで「絶対矛盾的自己同一」なのだ。
(以下略)

シャンティ・フーラ
https://shanti-phula.net/ja/social/blog/?p=224592

posted by datasea at 13:51| Comment(0) | # 詩・小説・著書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする